講演情報

[T1-P-25]ホルスト・グラーベンの繰り返し沈み込みがもたらす浅部沈み込み帯の広域せん断帯形成

*高下 裕章1、野田 篤1、宮川 歩夢1、橘 隆海2,1、NISHIMOTO M.Michelle4,3,1、大熊 祐一6,5,1、小田 和佳2,1、藤内 智士2、兼子 尚知1、佐久間 博7、大坪 誠1 (1. 産業技術総合研究所、2. 高知大学、3. 日本女子大学、4. University of Massachusetts Amherst、5. 東京大学大気海洋研究所、6. 海洋技術開発株式会社、7. 物質・材料研究機構)
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キーワード:

沈み込み帯、アナログモデル実験、ホルスト・グラーベン、プレート境界断層、日本海溝

 2011年東北地方太平洋沖地震(Mw 9.0)では、プレート境界断層の破壊が海底面近くの浅部領域にまで到達し、巨大な津波を発生させた[1-4]。従来、沈み込み帯浅部は主に非地震性の定常すべりが卓越する領域と考えられており[5-7]、その破壊プロセスについては十分に検討されてこなかった。地震発生後に行われた調査により、海溝軸付近の海底下には、薄いプレート境界断層と、その上盤側に発達する厚い変形帯が存在することが報告された[3, 8-10]。一般的に、沈み込み直後の浅部プレート境界では、断層の変位量が比較的小さいために変形帯の厚さは限定的であると考えられている[11]。しかしながら、実際には先述のように海溝軸近傍において異常に厚い変形帯が確認されており、日本海溝浅部プレート境界における構造的な複雑性が示されている。
これまで我々は、この複雑な地質構造の形成過程を理解するため、アナログ実験を用いた検討を行ってきた。先行研究では、グラーベンの沈み込みに伴ってプレート境界断層が上方へ徐々に屈曲し、その下方にショートカットする断層が新たに形成される過程が繰り返されることを示した[12]。我々はこのような断層位置の周期的な移動を「Fault dancing」と名付け、プレート境界断層の位置の不安定化が厚いせん断帯の急速な形成をもたらす可能性を示した[12]。さらにこの断層現象は、グラーベンに限らず、摩擦係数の高い海山の沈み込みを模した実験においても再現された[13]。しかしながら、これらの実験は主に単一の凹凸地形の沈み込みを対象としており、自然界の沈み込み帯でみられるようなホルストグラーベン地形の連続的な沈み込みを十分には再現していなかった。そのためFault dancing がウェッジ内部において時間的・空間的にどのように発達するのか、またその発生条件については十分に明らかにされていなかった。
本研究では、この課題を検討するため、新たに長大な砂箱実験装置を開発し、ホルストグラーベンが繰り返し沈み込む過程を再現した。さらに、実験では、デジタル画像相関法(Digital Image Correlation: DIC)を用いて、変形量および断層発達過程を可視化した。その結果、Fault dancing はウェッジ先端における沈み込み初期に限られる現象ではなく、グラーベンがウェッジ下部へ沈み込んだ後にも継続的に発生することが明らかとなった。特に、Fault dancingは沈み込むグラーベンの位置に対応して発達するため、グラーベンの沈み込みの進行に伴い、プレート境界断層に沿ってせん断帯の形成範囲が拡大することが示された。また、グラーベン内ではプレート境界断層が砂同士の接触面に沿って発達するため、ホルスト部に比べて相対的に摩擦係数の高いプレート境界が形成される。これは、実際の日本海溝を模してホルスト上面の摩擦係数を砂の摩擦係数よりも低く設定していることによる。先行研究では、このような高摩擦条件下では単一の安定したプレート境界断層が維持されにくいことが、摩擦係数の高い海山の沈み込み実験により示されている[13]。したがって、ホルストグラーベン地形の沈み込みに伴って局所的に高摩擦なプレート境界が形成されることが、Fault dancingの要因であると考えられる。千島海溝や伊豆・小笠原海溝などにおいてもホルストグラーベン地形の反復的な沈み込みが起きていることから、日本海溝と類似した厚いせん断帯がの形成が期待される。さらにFault dancing によって形成される厚く分散したせん断帯は、複雑な地質構造を形成するだけでなく、プレート境界近傍の透水性構造や流体移動経路を不均質化しうる。そのため、このような構造発達過程は、浅部プレート境界の力学的挙動,特に地震活動への影響を及ぼす可能性が考えられる。

参考文献
[1]Fujiwara et al., 2011, Science [2]Kodaira et al., 2012, Nat. Geosci. [3]Chester et al., 2013, Science [4]Sun et al., 2017, Nat. Commun. [5]Scholz, 1998, Nature [6]Bilek and Lay, 2002, Geophys. Res. Lett. [7]Currie et al., 2002, J. Geophys. Res.[8]Regalla et al., 2019, Geochem. Geophys. Geosyst. [9]Qin et al., 2022, Earth Planet. Sci. Lett. [10]Iwai et al., 2025, Island Arc [11]Kim and Sanderson, 2005, Earth-Sci. Rev. [12]Koge et al., 2018, Prog. Earth Planet. Sci. [13]Okuma et al., 2022, Tectonophysics.

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