講演情報

[T3-P-8]有馬-高槻断層帯に産する粉砕花崗岩における石英および斜長石のフラクタル次元解析

*岸本 真歩1、奥平 敬元1 (1. 大阪公立大学)
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【ハイライト講演】  大規模断層沿いに産する粉砕岩は,地震時の高速破壊過程を記録している可能性がある.本研究では,有馬―高槻断層帯の粉砕花崗岩について,石英と斜長石の破壊組織をフラクタル解析し,断層から離れるにつれて破砕の程度が系統的に変化することを示す.さらに鉱物ごとの亀裂進展の違いから,地震時の動的破壊過程に迫る. ※ハイライト講演とは...

キーワード:

粉砕岩、フラクタル次元、石英、斜長石

【はじめに】粉砕岩(pulverized rock)は,せん断による粒子のずれや回転をほとんど伴わずに構成鉱物が破砕・細粒化し,粉砕前の岩石組織や鉱物粒界が保持された断層岩である.粉砕岩は大規模横ずれ断層帯に特徴的に産し,有馬-高槻断層帯の白水峡露頭においても報告される(Mitchell et al., 2011; Muto et al., 2015).その形成には超剪断地震に伴う衝撃波が関与し,激しい粉砕が引き起こされた可能性が指摘されている(Yao et al., 2020)が,その詳細は不明である.粉砕岩の形成過程の解明には構成鉱物の定量的組織解析が重要である(Nagahama, 1993; Muto et al., 2015).粉砕粒子の粒径分布はべき乗則に従うフラクタル性を示し,フラクタル次元は破壊エネルギーと関係すると考えられているが,天然の粉砕岩における報告例は限られている.本研究では白水峡露頭において,断層帯に直交する方向で約50 m間隔で採取した粉砕花崗岩試料を対象とし(断層帯から最も離れた場所は約250 m),石英および斜長石の破砕構造を比較することで,鉱物ごとの破壊様式やフラクタル次元の違い・変化を検討した.
【手法】石英の粒径分布は,ImageJを用いて各粒子面積を測定し,円相当粒径を算出した.粒径-累積度数の粒径分布を両対数プロット上で解析し,フラクタル次元を求めた.斜長石は劈開の影響を受けて特定方向に亀裂が発達しており,その亀裂は斜長石を貫通していないことが多い.そこで,亀裂の発達を定量化するため,劈開方向に平行・垂直な測線を用いて亀裂間隔を計測するintersection法を適用した.また,石英にも同法を適用し,粒径分布との比較を行った.
【結果・議論】鏡下観察の結果,石英は粒子を貫通する亀裂が多く,亀裂の方向に規則性は見られず等方的な破壊を示した.一方,斜長石は直線的な亀裂が多く,石英と比較して粒子を貫通しない亀裂の割合が高かった.また,構成鉱物を切断してきた亀裂が斜長石に到達した際,斜長石の粒内亀裂の卓越方向に系統的に変化が認められた.これは,亀裂先端が粒界に達した際に「粒界にまわりこむか」「粒内を突っ切るか」が,その瞬間の応力状態や結晶方位(劈開)によって決定される現象(Prajapati et al., 2020)に対応すると考えられ,粒界の抵抗(interfacial crack resistance)と粒内の異方的な破壊抵抗(anisotropic crack resistance)のバランスが動的応力場で変化したことを示唆すると考えられる.フラクタル次元解析については,石英粒子の粒径分布は全ての採取地点において約0.5 mm付近で屈曲点が認められた.屈曲点を境として細粒域および粗粒域に分けて近似した結果,細粒域と粗粒域それぞれのフラクタル次元の値は断層面から離れるにつれて減少する傾向を示し,細粒域のフラクタル次元は2.19→0.78,粗粒域のフラクタル次元は3.20→1.16となった.石英粒径のフラクタル次元の値は既報の断層岩のフラクタル次元(Keulen et al., 2007)の範囲と概ね一致した.一方,白水峡における先行研究(Muto et al., 2015)のものと比較すると,本研究で得られたフラクタル次元は概ね1程度低い.断層帯からの距離が100 mの試料に含まれる斜長石については,劈開に平行な測線で細粒域1.50,粗粒域2.60,垂直な測線で細粒域1.24,粗粒域2.88となった.亀裂間隔の平均・中央値・最大値は両測線でほぼ同程度であり,劈開に垂直な方向にも同程度の亀裂が存在する可能性が示唆される(他の地点における斜長石に関しては現在解析中).同一地点における石英のintersection法によるフラクタル次元は粒径分布から得た値とほぼ一致した.石英と斜長石の細粒域のフラクタル次元を比較すると両者に大きな差はなく,劈開の有無による破壊の異方性がフラクタル次元そのものに及ぼす影響は限定的であることが示唆された.一方,鏡下観察で確認された粒界での亀裂進展方向の変化は,異方性が破壊様式(亀裂の伝播経路)には影響していることを示しており,フラクタル次元だけでは捉えきれない鉱物ごとの破壊挙動の違いが存在する.
【文献】Mitchell et al. (2011) Earth Planet Sci Lett, 308, 284–297; Muto et al. (2015) Geophys Res Lett, 42, 3811–3819; Yao et al. (2020) J Geophys Res Solid Earth, 125, e2020JB019388; Nagahama (1993) Int J Rock Mech Min Sci Geomech Abstr, 30, 469–471; Prajapati et al. (2020) Comput Geosci, 24, 1361–1376; Keulen et al. (2007) J Struct Geol, 29, 1282–1300

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