講演情報
[T3-P-13]日本海溝に沈み込む堆積物の続成作用がプレート境界での
力学的特性に与える影響に関する実験的研究
*井藤 隼斗1、岡﨑 啓史1,2、上田 瑞貴3、濱田 洋平2、山口 飛鳥4 (1. 広島大学先進理工系科学研究科、2. JAMSTEC、3. 気象庁、4. 東京大学大気海洋研究所)
キーワード:
浅部スロー地震、日本海溝、続成作用、摩擦特性
日本海溝では年間約10 cmの速度で太平洋プレートが沈み込んでおり、プレート境界ではスロー地震や海溝型地震など多様な滑り挙動が観測されている。東北沈み込み帯のプレート境界には珪藻や放散虫遺骸などの非晶質シリカや火山ガラス、シリカ鉱物、粘土鉱物などから構成される堆積物が存在していると考えられている。これら堆積物は、沈み込みに伴い圧密や膠結作用、鉱物の相転移などの続成作用を経験する。Kimura et al. (2012)は、opal-Aからopal-CTを介したquartzへの相転移や、smectiteからilliteへの相転移が起きる深さが浅部スロー地震発生域や地震発生帯と一致し、堆積物の比較的低温での続成作用が摩擦特性の変化をもたらし、浅部での滑り挙動を支配していると提案した。しかし、続成作用が堆積物の摩擦特性や断層の力学的特性にどのような影響を与えるかはよくわかっていない。本研究では実験室で堆積物を高温高圧熱水環境下で長時間煮込むことで続成作用を再現し、続成作用の進行が摩擦特性にもたらす変化について調べた。実験試料は新青丸によりKS-15-3航海で東北沈み込み帯アウターライズ域から採取されたコア試料を用いた。採取された堆積物試料は将来的に沈み込み帯での断層形成物質になる可能性がある。実験には広島大学設置のガス圧式高温高圧変形透水試験機を用いた。この試験機を用い、堆積物試料を、封圧(Pc)150 MPa、間隙水圧(Pp)58 MPaの環境下で温度(T)を 20℃から250℃、保持時間(t)を10分、1日、1週間、1カ月と変化させて煮込むことで続成作用の進行を段階的に再現した。また、続成作用の進行度を評価するため保持時間中の試料の圧縮量と浸透率を継続的に測定した。続成作用の再現後、軸変位速度(v)0.1-1-10㎛/sの速度ステップ摩擦試験を行うことで続成作用の進行が摩擦特性に及ぼす影響について調べた。摩擦特性の評価は主に速度・状態依存摩擦則(RSF則)(Dieterich,1979; Ruina,1983)より摩擦係数の速度依存性を示すパラメータのa-bの値により行った。a-bの値が正であるとき断層は速度強化挙動を示し安定滑りを示すが、負であるとき断層は速度弱化挙動を示し地震の核となり得ると考えられる。高圧高温熱水環境の保持中、堆積物試料は経過時間の対数に線型な圧縮と浸透率減少を示した。これは、試料内で時間依存の圧密作用や鉱物の溶解などの反応が起こった事を示すと考えられる。また、堆積物の摩擦係数は温度と煮込み時間の増加に伴い上昇する傾向を持っていた。一方でa-bの値は温度と煮込み時間の増加に伴い減少する傾向を持ち、滑り速度の増加に対して増加する傾向が観察された。これらの結果から続成作用の進行は堆積物の摩擦特性を変化させ、速度弱化挙動を示す傾向をもつ事が分かった。摩擦特性の変化を理解するため、RSFパラメータ(a ,b ,Dc ,µ)と実験条件(T, t, v)に対し主成分分析及び重回帰分析を行った。その結果、aの値は速度(v)の増加に伴い増加傾向を示し、bの値は温度(T)と煮込み時間(t)の増加に伴い増加傾向を示した。これらの解析的に得られたa-bの変化傾向を天然の温度、沈み込み開始からの時間、すべり速度に外挿した結果、堆積物試料の続成作用は浅部でのスロー地震発生やスロー地震から地震への滑り挙動の漸移を説明しうることが示唆された。今後は堆積物試料に対して化学的な分析を行う事で続成作用の進行がシリカ鉱物や粘土鉱物にどのような変化をもたらし、摩擦特性に影響を与えるか検討する。
[引用文献]
Kimura G et al., (2012), Runaway slip to the trench due to rupture of highly pressurized megathrust beneath the middle trench slope: the tsunamigenesis of the 2011 Tohoku earthquake off the east coast of northern Japan. Earth and Planetary Science Letters, 339, 32-45.
Dieterich, J. H. (1978), Time-dependent friction and the mechanics of stick-slip, Pure Appl. Geophys., 116, 790–806.
Ruina, A. (1983), Slip instability and state variable friction laws, J. Geophys. Res., 88, 10,359–10,370, doi:10.1029/JB088iB12p10359.
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