講演情報

[T8-O-8]大学専門教育における地質技術者による実務経験を生かした講義

*小俣 雅志1、和田 里絵2、遠藤 司3、佐々木 和彦4 (1. 株式会社パスコ、2. 基礎地盤コンサルタンツ株式会社、3. 応用地質株式会社、4. 佐々木技術士事務所)
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キーワード:

大学専門教育、地質技術者、実務経験、技術者倫理、地質業界

 大学で地球科学を学んだ学生のうち、ある一定数の卒業生は地球科学に関連した企業に就職している。地球科学に関連した企業と言ってもその業態は様々である。その上、これらの企業の業務内情は一般の人々の目に触れる機会も少なく、地球科学を学ぶ学生にとっても、どのような企業があるか、それらの企業がどのような業務を行っているのか、大学で学んだことをどのように社会で生かせるのかを知る機会は限られている。このような社会環境の中で、私たち地球科学系の企業に勤務する現役の地質技術者が、大学で地球科学を専門とする学生に対して実践している教育の例を紹介する。講義は3名の非常勤講師によるオムニバス形式で実施している。
講義は日本大学文理学部地球科学科の2年生を対象とし、技術者の社会的意義、技術者倫理、JABEEと連携する技術士制度などについて、地球環境と社会環境の背景を踏まえた内容の講義を行っている。JABEEプログラムの基準1の項目1.2における「(b)技術が社会や自然に及ぼす影響や効果、及び技術者の社会に対する貢献と責任に関する理解」に対応する授業であり、学科の学習・教育到達目標の「技術者倫理を身につける」に対応している。授業項目としては、「当学科が育成すべき人材像、地質技術者、技術者倫理」、「JABEE制度」、「技術士制度」、「継続研さん」、「専門職の責任」、「コンプライアンス」、「知的財産権」、「リスクマネジメント」、「データ利活用に関する技術者倫理」、「サスティナビリティ」である。それぞれの項目に関して教科書的な技術者倫理だけではなく、講師たちの経験、企業や業界での状況、地質技術者の周囲で起きているトピックスを交えて説明するように努めている。加えて、より実務的な「社会資本の整備・メンテナンス」、「防災・減災」、「環境保全」について、地質技術者が経験している実際の現場事例を含め、地質技術者が社会に対していかに貢献しているかを伝えている。この講義を通じて、これまで知らなかった地質技術者の活躍の「場」への気づきとなっている。
授業内容としては、地質技術者の話が主となることから、日本技術士会の技術士倫理綱領の条項を絡めて説明するほか、技術士法、日本応用地質学会の倫理規程、日本地質学会の倫理綱領、文部科学省科学技術・学術審議会技術士分科会による技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)なども紹介し、地質技術者が直面する倫理的判断を行う場面を伝えるようにしている。学生が経験したことのない地質技術者の倫理について考えることは困難な場面も多いことから、学生の立場に置き換えた課題設定によるレポートを課す等の工夫をしている。また、自分の経歴と地質技術者が社会から求められるきっかけとなった災害等の年表から、社会からの要請によって、取り組む業務対象が時代によって変化することを示すなど、具体的な技術者像を示すことで業界のイメージが掴みやすいようにしている。
また、授業中には4~7名程度の班を作ってグループワークを実施し、グループ内で議論した結果を発表するようにしている。地質技術者が社会に出て説明責任を果たすためには、技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)にあるコミュニケーション力、リーダーシップが求められることを伝えることで、このグループワークは社会に出て技術者として活躍する際に必要な能力を磨くための訓練であることを意識してもらっている。学生の授業後の感想文を見ると、このグループワークは非常に好評である。最初はグループワークに慣れていなかった学生も、徐々に活発に議論するようになり、自分の考えとは違った考えに触れ、グループ内で議論することで気づきや刺激を受けているようである。グループワーク時に発言できなかったこと、班の代表となって発表を志願できなかったことへの反省と、次回はそれを克服したいという気持ちが書かれた感想文も多く目にすることができる。
本講義は、受講学生のアンケート結果により学科内で好評を博した講義の一つとして令和7年度前学期文理ティーチング・アワードの表彰を受け、講師冥利につきる結果となった。
以上のように現役の地質技術者が、技術者倫理を対象とする講義を通して、次のようなことを伝えている。①地球科学科を卒業した後には地質技術者として社会に貢献する業界があること。②地質技術者がどのような業務に関わっているかを知る。③地質技術者が必要な技術者倫理を知る。私たちは、この講義を受けた学生が卒業後に地質技術者の仲間となって活躍することを期待している。大学で地球科学を学んだ学生が卒業後も専門分野に生かして社会で活躍してもらうためには、地質技術者が社会で活躍できる業界があり、そこには多くの企業があること、沢山の地質技術者が活躍していることを、より多くの学生に知ってもらうことが重要であると考える。

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