講演情報
[1J02]JICA環境社会配慮ガイドライン運用初期段階における審査会答申の評価
*小泉 幸弘1、花岡 伸也2 (1. 独立行政法人国際協力機構、2. 東京科学大学)
キーワード:
JICA環境社会配慮ガイドライン、カンボジア、つばさ橋、答申、交通需要予測
日本の無償資金協力で建設されたカンボジア・つばさ橋(調査開始時の名称は第二メコン架橋)は、2001年12月のフンセン首相による協力要請から2015年4月の供用開始まで約14年を要した。小泉・花岡(2023)は、要請から2010年6月の閣議決定に至る過程について分析し、無償資金協力実施の意思決定となる閣議決定までに長い期間を要した要因として、2006年5月の環境社会配慮審査会(以下「審査会」)答申に記載された「交通需要予測の精度を勘案し、事業実施主体である公共事業運輸省が今後数年の交通量モニタリングを実施し、その結果を踏まえてプロジェクトの適切な着工時期について検討する必要がある」とのコメントが本事業実施時期の判断に大きな影響を与えたことを示した。本報告論文では、小泉・花岡(2023)の分析結果を踏まえ、JICA環境社会配慮ガイドライン(以下「2004年ガイドライン」)の運用における審査会答申を評価し、つばさ橋案件答申の特長・特異性ならびに他案件との関連について明らかにした。この結果、つばさ橋答申に記載された「交通需要予測」のキーワードはグッドプラクティスとして紹介され、他案件の審査会での議論への影響を与えたが、需要予測結果をモニタリングするとした答申は、需要予測が過大推計でないかを検証し実施のタイミングを先送りする役割を果たすことはできても、需要予測が過小推計であり、より早い時期に供用開始が望ましいとされた場合に事業化のタイミングを早めることが事実上困難なものであり、早期着手が想定される場合において、グッドプラクティスとなりえないことが明らかになった。
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