講演情報
[1J03]国際開発における民間企業参画の有効性と限界
―ラオス人民民主共和国における国連と民間企業の共創プロジェクトを事例に―
*田才 諒哉1 (1. 株式会社坂ノ途中)
キーワード:
官民連携、サステナビリティ、民間セクター・エンゲージメント、コーヒーバリューチェーン、政府開発援助
本研究は、国際開発における民間企業参画の有効性と限界を検討することを目的とする。従来のODAによる農業支援プロジェクトが「生産重視」「期間限定」「自立促進」を重視してきたのに対し、民間企業を巻き込むアプローチは「市場志向」「長期性と持続性の担保」「地域住民との共創」を特徴とする。本稿では、株式会社坂ノ途中と国連世界食糧計画(WFP)がラオスで共同実施した小規模コーヒー農家支援プロジェクトを事例に、従来のODAによる市場志向型農業支援モデルとの比較分析及びプロジェクト対象8村の住民へのインタビュー調査を通じて、民間企業参画型プロジェクトの特性を明らかにした。
分析の結果、第一に、民間企業の参画によりプロジェクト終了後も市場接続が維持され、長期的な関係性の継続が可能であること、第二に、販路が事前に確保されていることにより、研修内容が市場規格に基づいた実践的なものとなり、販売可能性の高い生産が促進されること、第三に、公的セクターの資金が初期段階の農家支援を担い、その後に企業が市場接続を引き継ぐことで、支援からビジネスへの「シームレスな移行」が実現していることが明らかとなった。さらに、コーヒーを通じた住民の役割意識や環境保全意識の変化など、経済的効果を超えた社会的・文化的な成果も観察された。
一方で、コーヒーの収穫までに時間を要するため短期的な成果を実感しにくいこと、特定企業や政府構造への依存が残ることが限界として指摘された。これらの課題は、企業参画型開発が持つ「持続性と依存性のジレンマ」を示唆するものである。総じて本研究は、民間企業の市場メカニズムとODAの社会的包摂性を統合する「ハイブリッド型国際協力」の可能性を提示し、国際開発の新たな方向性を考察する基礎的知見を提供するものである。
分析の結果、第一に、民間企業の参画によりプロジェクト終了後も市場接続が維持され、長期的な関係性の継続が可能であること、第二に、販路が事前に確保されていることにより、研修内容が市場規格に基づいた実践的なものとなり、販売可能性の高い生産が促進されること、第三に、公的セクターの資金が初期段階の農家支援を担い、その後に企業が市場接続を引き継ぐことで、支援からビジネスへの「シームレスな移行」が実現していることが明らかとなった。さらに、コーヒーを通じた住民の役割意識や環境保全意識の変化など、経済的効果を超えた社会的・文化的な成果も観察された。
一方で、コーヒーの収穫までに時間を要するため短期的な成果を実感しにくいこと、特定企業や政府構造への依存が残ることが限界として指摘された。これらの課題は、企業参画型開発が持つ「持続性と依存性のジレンマ」を示唆するものである。総じて本研究は、民間企業の市場メカニズムとODAの社会的包摂性を統合する「ハイブリッド型国際協力」の可能性を提示し、国際開発の新たな方向性を考察する基礎的知見を提供するものである。
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