講演情報

[1O09]ブータン王国におけるワーキングメモリ理論を活用した支援を必要とする児童の学習態度の変化に関する研究:英語学習に焦点をあてて

*佐藤 由佳子1 (1. 広島大学大学院)

キーワード:

ブータン王国、ワーキングメモリ、支援を必要とする児童、学習態度

ブータン王国では、学習に困難を抱える児童への支援体制が十分に整っていない。医学的診断や専門的なインクルーシブ教育の枠組みが未発達であり、学習に困難を示す児童の実態が十分に把握されず、効果的な教育的支援方法も確立されていない状況にある。ブータンでは英語が公用語の一つとして定められており、教育においても、英語の習得は学習全般に大きな影響を与える。しかし、授業において集中力を保つことが難しい児童や、学習態度が不安定な児童が少なくない。彼らへの適切な支援方法を見出すことは、教育の質を向上させるうえで喫緊の課題となっている。 本研究は、この課題に対してワーキングメモリ理論を応用し、支援を要する児童の英語学習における学習態度の変化を調査することを目的とした。ワーキングメモリは情報の一時的保持と操作を担う認知機能であり、学習の基盤として重要な役割を果たす。近年の研究では、学習困難の背景にワーキングメモリの弱さが関係していることが指摘されており、その補完を目指す教育的アプローチの有効性が示唆されている。調査は公立学校に在籍する4年生以下の児童を対象に、2つのグループに分けて、それぞれ観察と介入を実施した。これにより、児童の学習態度や集中力に見られる変化を記録し、支援が必要な児童への学習支援方法の可能性を検討した。結果として、英語の学力全般の向上は限定的であったが,一部の児童にはアルファベットの読字や、学習時の姿勢保持などの肯定的変化が見られた。 本研究の成果は、支援を要する児童への効果的な学習方法の開発に貢献する可能性を秘めている。また、ワーキングメモリ理論に基づいた支援の実践的な例を提示することで、インクルーシブ教育における具体的な支援方略の可能性が高まると考えられる。

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