講演情報
[1O15]非母語による教育の実態と教育支援に関する研究:タイの少数民族リス族青年の語りから
*小野 康子1 (1. 兵庫県立大学)
キーワード:
基礎教育、少数民族の子ども、母語、タイ
タイ王国には、北部や西部の山岳地域および南部に少数民族コミュニティが多く存在する。多数民族であるタイ民族とは異なる文化背景を持ちタイ語を母語としない彼らは、学校教育の場において様々な課題に直面している。
本研究ではタイ北部の少数民族であるリス族を対象として、彼ら自身のタイ語による教育の捉え方、タイ語習得の経験、その経験が現在の生活や仕事に与えている影響などについてライフヒストリー手法を用いて明らかにする。聞き取り対象者は、チェンマイ市および近郊在住の20代から30代の5人のリス族の青年らである。上記分析を行ったうえで、母語および文化を取り入れた効果的な学校教育推進にむけた教育支援の在り方を考察する。
今回の対象者は現在、仕事、大学、日常生活にてタイ語を使用する環境にある。また幼少期より学校内の授業はタイ語、家庭や友人との会話は母語(リス語)とタイ語の二言語を併用している。加えて、その他の少数民族言語を使用している事例もある。幼少期からの授業以外の他者との交流により母語とタイ語による二言語併用の会話は彼らにとって特別なことではないことが推測できる。現在でもタイ語と母語を場面に応じて使い分けていることから、言語運用に関しては、問題がないと言える。
次に、彼らの語りから、小学校低学年までに、非母語(タイ語)による授業という言語の壁による学習の悩みが聞き取れた。しかし、小学校高学年になるにつれその問題を克服している。また、学校内で、タイ民族やタイ語と母語が似ているタイヤイ族の同級生、場合によっては、一部の教員から言語の違いや少数民族出身ということを理由にからかいの対象になったことにも触れている。一方で、どの青年も、小中学校における好きな科目、お気に入りのタイ人の教員、積極的に参加した学校活動等について語っている。今回の語りからは、言語による学習のつまずきやからかわれた経験と退学や不登校といった初等教育修了率および中等教育進学率低下との結びつきは確認できなかった。
今回の調査によりタイ人教員による少数民族の子どもへの言語的および文化的配慮の必要性を再確認した。教員らが学校全体で多様性を促進する環境を作る必要がある。さらに、就学前または小学校低学年における言語による学習のつまずきへの対応を行うことで、早期の学びの促進につながると考えられる。
本研究ではタイ北部の少数民族であるリス族を対象として、彼ら自身のタイ語による教育の捉え方、タイ語習得の経験、その経験が現在の生活や仕事に与えている影響などについてライフヒストリー手法を用いて明らかにする。聞き取り対象者は、チェンマイ市および近郊在住の20代から30代の5人のリス族の青年らである。上記分析を行ったうえで、母語および文化を取り入れた効果的な学校教育推進にむけた教育支援の在り方を考察する。
今回の対象者は現在、仕事、大学、日常生活にてタイ語を使用する環境にある。また幼少期より学校内の授業はタイ語、家庭や友人との会話は母語(リス語)とタイ語の二言語を併用している。加えて、その他の少数民族言語を使用している事例もある。幼少期からの授業以外の他者との交流により母語とタイ語による二言語併用の会話は彼らにとって特別なことではないことが推測できる。現在でもタイ語と母語を場面に応じて使い分けていることから、言語運用に関しては、問題がないと言える。
次に、彼らの語りから、小学校低学年までに、非母語(タイ語)による授業という言語の壁による学習の悩みが聞き取れた。しかし、小学校高学年になるにつれその問題を克服している。また、学校内で、タイ民族やタイ語と母語が似ているタイヤイ族の同級生、場合によっては、一部の教員から言語の違いや少数民族出身ということを理由にからかいの対象になったことにも触れている。一方で、どの青年も、小中学校における好きな科目、お気に入りのタイ人の教員、積極的に参加した学校活動等について語っている。今回の語りからは、言語による学習のつまずきやからかわれた経験と退学や不登校といった初等教育修了率および中等教育進学率低下との結びつきは確認できなかった。
今回の調査によりタイ人教員による少数民族の子どもへの言語的および文化的配慮の必要性を再確認した。教員らが学校全体で多様性を促進する環境を作る必要がある。さらに、就学前または小学校低学年における言語による学習のつまずきへの対応を行うことで、早期の学びの促進につながると考えられる。
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