講演情報

[1O24]地球規模課題対応国際科学技術協力プロジェクトでの膨潤性粘土分布域における住民参加型道路改良手法の開発

*福林 良典1、金子 守恵2、エリシ アルガチョ3、ビルハヌ カザフン3、松隈 俊祐4 (1. 宮崎大学、2. 京都大学、3. ジンカ大学、4. 国際連合食糧農業機関)

キーワード:

国際科学技術協力プロジェクト、膨潤性粘土、在来植物、住民参加、生活道路

サブサハラアフリカを含む世界各地に分布する膨潤性粘土は問題土とされ、その分布域に建設されたインフラは、大きな損傷を受けることが多い。既往の主な対策は良質土への置換や土質改良であるが、途上国農村部での小規模道路を対象とする、地域住民による実践が可能な対策工法は開発されていない。そこで本研究では、セルロースによる膨潤性粘土改良効果を想定し、エチオピアの在来植物由来の土質改良材の開発と、地域住民が運用し道路改良を行うモデルの構築を目的とする。そのため著者らはエチオピアにて、2018年より2024年まで国際科学技術協力プロジェクトを実践した。本稿では、地域住民が新工法を運用し道路問題を解決するために工夫した取組を示し、教訓を整理する。著者らは、工学、農学、社会科学分野の学際的な研究チームを構成し、エチオピアの首都にある科学技術大学、地方大学、そしてエチオピア道路庁研究所との共同体制を構築した。プロジェクト初期段階で住民との労働集約的な手法での道路整備を実施したことで、対象地域の住民や行政機関よりプロジェクトの目的と協力内容に理解を得た。また地域住民への聞き取りから、通行困難となる道路箇所は、住民が協力して泥の撤去や道路排水整備など、補修されてきたことが明らかになった。しかし、近隣の保健所への最短ルートとなる道路の開設を要望しつつ、膨潤性粘土地盤上を通過するため技術的な障害で実現せずにいた。そこで地方行政は、本プロジェクトにこの道路開設に向け協力を要請した。プロジェクトによる技術指導や調整を通して、地方行政や道路行政が機材や資材を貸与し、地域住民が新工法を適用しつつ作業を行った結果、保健所へのルートが開設されアクセスが向上した。地方大学を拠点とし、研究者と近傍の地域住民、地方行政官、道路行政官との連携が可能となった。新工法の開発や導入とともに住民による利用が開始されるに至る、科学技術協力の1つのアプローチを示すことができた。

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