講演情報
[1O25]中退から再び学びの世界へ:タイにおける正規・ノンフォーマル・オルタナティブ教育への移行 ―生徒と教師の関係性に着目して―
*佐藤 仁美1 (1. 広島大学大学院)
キーワード:
中退、タイ、ノンフォーマル教育、オルタナティブ教育、教師と生徒の関係
1. 研究の背景およびリサーチクエスチョン
タイ政府は2023年に「Thailand Zero Dropout」政策を国家優先課題として掲げたが、2024年時点でも約40万人の義務教育年齢の子どもたちが学校に通っていない。タイの中退に関する既存研究は量的手法や高校生以上を対象としたものが主流であり、小中学生を対象に含めた質的研究は限定的である。
本研究は、タイ北部の正規教育(FE)、ノンフォーマル教育 (NFE) センター、コミュニティ学習センター(CLC)を対象とし、①生徒がFEから中退する要因は何か、②中退後のオルタナティブな教育の場で、生徒はどのような経験を通じて学びの軌跡を再構築するのか、という問いを探求する。
2. 資料・情報および分析方法
本研究は質的ケーススタディであり、生徒、教育者、専門家ら計18人への半構造化インタビュー、及び関連政策文書の収集を通じてデータを収集した。インタビューデータはテーマ分析を、収集した文書は政策・制度分析を用い、多角的に分析を進める。
3. 得られた知見
暫定的な分析からは、貧困という背景要因に加え、FEの現場における生徒の尊厳を傷つける経験が中退の直接的な引き金となっていることが示唆される。具体的には、教師による偏見や不当な扱い、硬直的な校則への不信感が挙げられる。これに対し、CLCは、規律中心で画一的なFE学校とは明確に対照的な役割を果たしていた。CLCは、生徒一人ひとりの状況に寄り添い、安心感を与える「セーフゾーン」を提供することで、一度失われた自己肯定感と学びへの意欲を回復させる上で不可欠な機能を担っている。
タイ政府は2023年に「Thailand Zero Dropout」政策を国家優先課題として掲げたが、2024年時点でも約40万人の義務教育年齢の子どもたちが学校に通っていない。タイの中退に関する既存研究は量的手法や高校生以上を対象としたものが主流であり、小中学生を対象に含めた質的研究は限定的である。
本研究は、タイ北部の正規教育(FE)、ノンフォーマル教育 (NFE) センター、コミュニティ学習センター(CLC)を対象とし、①生徒がFEから中退する要因は何か、②中退後のオルタナティブな教育の場で、生徒はどのような経験を通じて学びの軌跡を再構築するのか、という問いを探求する。
2. 資料・情報および分析方法
本研究は質的ケーススタディであり、生徒、教育者、専門家ら計18人への半構造化インタビュー、及び関連政策文書の収集を通じてデータを収集した。インタビューデータはテーマ分析を、収集した文書は政策・制度分析を用い、多角的に分析を進める。
3. 得られた知見
暫定的な分析からは、貧困という背景要因に加え、FEの現場における生徒の尊厳を傷つける経験が中退の直接的な引き金となっていることが示唆される。具体的には、教師による偏見や不当な扱い、硬直的な校則への不信感が挙げられる。これに対し、CLCは、規律中心で画一的なFE学校とは明確に対照的な役割を果たしていた。CLCは、生徒一人ひとりの状況に寄り添い、安心感を与える「セーフゾーン」を提供することで、一度失われた自己肯定感と学びへの意欲を回復させる上で不可欠な機能を担っている。
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