講演情報
[1O26]SNS公益系アカウントの運営スタイルとシナリオ消費に関する研究-ポジティブ・ナラティブと貧困ポルノを対比に-
*石 雨馨1 (1. 東京大学大学院)
キーワード:
デジタル慈善、貧困ポルノ、信頼形成、市民参加、持続可能な寄付
本研究は、中国のSNS公益活動における異なるナラティブ表現が視聴者の共感・信頼・行動意図に与える影響を検証することを目的とする。近年、微博を中心としたインターネット公益は市民参加の主要チャネルとなっているが、2024年「99公益日」では募金額が前年比71%減少するなど、参加は断片化・短期化の傾向を示している。このように情報が氾濫し注意の持続が難しい状況では、単なる一時的共感では不十分であり、ナラティブを通じていかに信頼を獲得し行動へ導くかが持続的参加の鍵となる。
本研究は大塚(1989)の「物語消費」論を応用し、公益コンテンツを「シナリオ消費」=共感から信頼、さらに行動へ至る心理的連鎖として捉える。焦点とするのは、①苦難を強調する「貧困ポルノ型」と、②希望や回復を描く「ポジティブ・ナラティブ型」である。両者はいずれも共感を誘発し得るが、そこから信頼に至る可能性や経路には差異があると考えられる。
調査は2025年9月、中国在住で微博を週5回以上利用する18~40歳のユーザー約200名を対象に実施予定である。被験者には公益ショート動画2本(ポジティブ型・貧困ポルノ型)と、公益性を持たない旅行Vlog(プラセボ)を視聴させ、共感・信頼・行動意図を評価してもらう。すべての動画は「児童先天性心疾患支援」をテーマに統一し、外的要因を最小化する。分析では、特に信頼形成プロセスに注目し、両ナラティブがいかに信頼を喚起し得るか、またその経路がどのように異なるのかを明らかにする。
予備的観察では、ポジティブ・ナラティブは共感を自然に信頼へと結びつけやすい一方、貧困ポルノ型は一時的な情動喚起に留まり、信頼形成にはつながりにくい傾向が示唆された。今後の分析を通じて、公益団体がどのような叙事スタイルを用いれば「信頼」を基盤として持続的支援を獲得できるのかを明らかにし、理論と実務の両面で貢献することを目指す。
本研究は大塚(1989)の「物語消費」論を応用し、公益コンテンツを「シナリオ消費」=共感から信頼、さらに行動へ至る心理的連鎖として捉える。焦点とするのは、①苦難を強調する「貧困ポルノ型」と、②希望や回復を描く「ポジティブ・ナラティブ型」である。両者はいずれも共感を誘発し得るが、そこから信頼に至る可能性や経路には差異があると考えられる。
調査は2025年9月、中国在住で微博を週5回以上利用する18~40歳のユーザー約200名を対象に実施予定である。被験者には公益ショート動画2本(ポジティブ型・貧困ポルノ型)と、公益性を持たない旅行Vlog(プラセボ)を視聴させ、共感・信頼・行動意図を評価してもらう。すべての動画は「児童先天性心疾患支援」をテーマに統一し、外的要因を最小化する。分析では、特に信頼形成プロセスに注目し、両ナラティブがいかに信頼を喚起し得るか、またその経路がどのように異なるのかを明らかにする。
予備的観察では、ポジティブ・ナラティブは共感を自然に信頼へと結びつけやすい一方、貧困ポルノ型は一時的な情動喚起に留まり、信頼形成にはつながりにくい傾向が示唆された。今後の分析を通じて、公益団体がどのような叙事スタイルを用いれば「信頼」を基盤として持続的支援を獲得できるのかを明らかにし、理論と実務の両面で貢献することを目指す。
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