講演情報

[1O32]戦争と融資―相互扶助・慈善・援助・見返りの規範―

*玉村 優奈1 (1. 東京大学大学院/日本学術振興会)

キーワード:

融資、慈善、援助、相互扶助、頼母子講

1.研究の背景およびリサーチクエスチョン
【背景】第二次世界大戦後、日系人を中心に今大会の開催地である広島にはララ援助・ケア援助と呼ばれる民間中心の物資が送られた。同時に、日本はアメリカからガリオア・エロア資金を供与され、物資による援助が行われた。しかし、アメリカは日本とドイツに対して、「見返資金」を求めるようになる。冷戦やイラク戦争、テロにおいても、国際社会の融資の在り方は変容していった。以上の背景から本研究は、融資と戦争の関係に着目しつつ、相互扶助として自発的に生まれた融資の形態(頼母子講・無尽)とも比較し、今後の国際社会の在り方を再考することを目的とする。
【リサーチクエスチョン】融資はいつからできたのか?戦争において融資はどのように使われてきたのか?

2.資料・情報および分析方法
本研究は、ドキュメント分析による事例紹介が中心である。小野圭司(2021)『日本戦争経済史』(日経BP)や元世界銀行チーフエコノミストのジョセフ・E・スティグリッツ著『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』らを先行研究レビューに使用する。一次資料としては、『帝国議会衆議院委員会議録』等を中心に日本が法整備などの近代化を経るなかで直面した融資形態の変容を明らかにする。

3.得られた知見
本研究で得られた知見は主に3つある。1つ目は、戦争中の融資は負債関係を構築するための統治術としても使われたこと。2つ目は、贈与として得られていたと思っていたら負債の関係を負わされるように貸手側が借り手を管理しようとする働きかけがあること。3つ目は、融資において、構成員の間での信用関係と道徳の一致が重視され、近代的や開発事業の介入が必ずしも必須でない反例が存在することだ。

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