講演情報
[P-010]展示方法の違いが劣化した文化財染織品に及ぼす影響
〇古山 千夏1、加藤 雅人2、濱田 仁美1 (1. 東京家政大学、2. 東京文化財研究所)
キーワード:
磁石、伸子針、染織品、展示方法、文化財
目的 文化財染織品を博物館などで展示する際、伸子針や磁石が用いられている。しかし、これらの展示による影響は客観的に評価されていない。そこで本研究では、劣化した染織品を用いて、磁石貼付や付け外し、針による突き刺し試験を行い、劣化した染織品の外観及び物性の変化を調査した。適切な展示方法について提案することを目的とする。
方法 試料は、湿熱処理(80℃、65%RH)を20週間施した絹布(羽二重)、苧麻布(ブロード)、レーヨン布(タフタ)及び1900~1945年頃に作製された絹縮緬の帯と着物(東京家政大学博物館より移譲)を使用した。10回、30回の磁石付け外し及び3週間連続磁石貼付の実験を行い、磁石貼付前後の外観変化と通気性の測定から布構造の変化を考察した。突き刺し試験は引張圧縮試験機を用いて行い、突き刺し強度と布の構造について考察した。
結果 絹布は磁石付け外しによって糸が潰され、時間をおいても回復は見られなかった。鉄媒染の着物表地は、磁石付け外しのせん断力により、無撚糸のたて糸が破断した。突き刺し強度は糸の強度とは関係なく、布の空隙率に依存する傾向があった。これは、針が糸間に抜けると、糸の強度が弱くても破断しないためと考えられる。劣化した染織品は、糸の強度は弱いにも関わらず、湿熱処理布に近い突き刺し強度を示した。文化財を展示する際には、布の構造や劣化状態によって展示方法を使い分けることが望ましいと考える。
方法 試料は、湿熱処理(80℃、65%RH)を20週間施した絹布(羽二重)、苧麻布(ブロード)、レーヨン布(タフタ)及び1900~1945年頃に作製された絹縮緬の帯と着物(東京家政大学博物館より移譲)を使用した。10回、30回の磁石付け外し及び3週間連続磁石貼付の実験を行い、磁石貼付前後の外観変化と通気性の測定から布構造の変化を考察した。突き刺し試験は引張圧縮試験機を用いて行い、突き刺し強度と布の構造について考察した。
結果 絹布は磁石付け外しによって糸が潰され、時間をおいても回復は見られなかった。鉄媒染の着物表地は、磁石付け外しのせん断力により、無撚糸のたて糸が破断した。突き刺し強度は糸の強度とは関係なく、布の空隙率に依存する傾向があった。これは、針が糸間に抜けると、糸の強度が弱くても破断しないためと考えられる。劣化した染織品は、糸の強度は弱いにも関わらず、湿熱処理布に近い突き刺し強度を示した。文化財を展示する際には、布の構造や劣化状態によって展示方法を使い分けることが望ましいと考える。