講演情報

[P-056]和菓子の菓銘と意匠に込められた意味

〇福留 奈美1 (1. 東京聖栄大)
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キーワード:

和菓子、菓銘、季節感、別名、縁起

目的 和菓子は和食文化のキーコンテンツであり、2022年には文化庁の無形文化財として菓銘をもつ生菓子(煉切・こなし)が登録された。茶席の菓子としてよく用いられる煉切・こなしには、材料は同じでもその意匠と菓銘が施されることで新たな意味や異なる意味がこめられる。本研究は、菓銘のつく和菓子に日頃から親しむ茶人及び和菓子職人を対象にしたインタビュー調査をもとに、和菓子の命名と意匠に込められた意味構造の主たる構成要素と具体例を収集し整理することを目的とする。 方法 茶道の教授者及び菓子職人各1名へのインタビューを通して、茶席に用いられる菓銘の意味、背景となる知識、意図を表すための意匠の特徴や菓銘の特徴等についての予備調査を行った。続いて、4名の茶道教授者を対象に、具体的な和菓子の写真と菓銘を見せながら和菓子と菓銘を通して伝えられる意味についての半構造化インタビュー調査を行った。 結果 季節感を草花で表現する例が非常に多く、四季の区分だけでなく同じ春でも初春から晩春までの細かな季節の移り変わりを表す意匠と菓銘が使い分けられていた。また、草花の別名や著名な絵師による表現に因んだもの、縁起物や当て字、行事のモチーフ、歌舞伎等の催し、短歌や歴史上の出来事・人物にちなむ語句が用いられたもの等、菓銘と意匠を理解するために求められる知識は多岐にわたった。以上より、意味構造の主たる構成要素と具体例を広く集め整理することができた。