講演情報

[P-029]嬬恋村の伝統食品「くろこ」のデンプンの諸性質とパンへの応用

髙橋 雅子2、*富澤 歩美3、阿部 雅子1、大田原 美保4、村松 芳多子1、綾部 園子1 (1. 高崎健康福祉大、2. 共愛学園前橋国際大短、3. 和洋女大、4. 大妻女大)

キーワード:

くろこ、じゃがいもデンプン、デンプン粕

目的 「くろこ」はジャガイモからデンプンを取り除いたデンプン粕を冬季の屋外で半年保蔵して製造される群馬県嬬恋村の伝統食品である。我々は「くろこ」および「くろこ澱粉」の特性を「しろこ」(片栗粉)および「しろこ澱粉」と比較して明らかにするとともに、新規利用法としてパンへの応用を試み、その調理特性や嗜好性について検討した。
方法 試料は「嬬恋村くろこ保存会」が製造した「くろこ」および「しろこ」を用い、一般成分、デンプン・食物繊維、澱粉損傷度、試料粉の色、粒径分布、溶解度・膨潤力、示差走査熱量測定(DSC)および顕微鏡観察を行った。さらに、パンを調製し、比容積、色およびテクスチャー特性を測定し、官能評価を行った。
結果 顕微鏡観察により、くろこおよびくろこ澱粉では表面が損傷しているデンプン粒が観察され、澱粉損傷度はくろこの方が有意に高値であった。くろこ澱粉の平均粒径はしろこ澱粉よりも大きかった。示差走査熱量測定(DSC)から、くろこの方が糊化開始温度が低く、吸熱量も少なく糊化しやすいことが示唆された。くろこは80℃以上の高温で溶解度が高く、損傷澱粉の特徴と一致した。膨潤力はしろこより小さかった。くろこを用いたパンは、基準のパンに比べて内相の色がくすみ、硬かったが、強力粉の1/6程度の置換であれば,受容されるパンであることが明らかになった。