特別企画「実用化現場の最前線」
SSIIは、30年間にわたり「参加者のための学術集会」として画像センシング技術の発展を支え、産業界と学術界の交流を促進してきました。SSII2026では、産業界における実用化・現場課題に焦点を当てた特別企画「実用化現場の最前線」を開催いたします。
本企画では、産業界・産業に関係の深い研究者・開発者・技術者の皆さまをお招きし、実際の現場で直面している課題をインタラクティブ発表形式で共有していただきます。例えば、現在のAI技術でも対応が難しい課題や、理論やアルゴリズム単独では解決が困難な問題など、実務に即したリアルな課題を取り上げ、全参加者で解決に向けたアプローチを共に議論し、模索します。現場課題を起点に、社会実装を見据えた新たな研究開発の方向を見出し、コミュニティ全体として画像センシング技術の未来を共に描く機会とすることを狙いとします。
6月10日(水) 14:50~16:20 (IS1インタラクティブセッション内)


検査手順生成に基づくツール活用型汎用外観検査
講師:大澤 紘作 氏,加藤 邦人 氏(岐阜大学)
概要:本研究の目的は,対象ごとの個別学習を行うことなく,多様な製品・欠陥に適用可能な汎用外観検査手法を構築することである.既存の単一モデルによる直接的な良否判定では,製品仕様や欠陥様態の多様性に対する汎化性能に課題があり,形状異常などの構造的欠陥の検出と,数量や寸法の仕様不適合といった論理的欠陥の確認を同時に扱うことが難しい.そこで本研究では,外観検査を検査対象を構成要素や性質ごとにサブタスクへ分解し,各タスクに適切なツールを割り当てる問題として再定義し,各段階で必要な画像認識ツールを活用しながら判定を行う枠組みを提案する.具体的には,入力画像および検査仕様書から検査命令を生成し,LLMベースのPlannerが中間結果を参照しながら処理の選択・更新を逐次行う.この構成により,未学習の製品に対しても対象や条件の変化へ追従しつつ,欠陥検出・数量確認・寸法計測といった多様な検査タスクを統合的に実施できる.


OpenTrackIOによるリアルタイム実写CG合成
― 実カメラパラメータ出力とコンピュータビジョン応用に向けた展望 ―
講師:明壁 祐基 氏、横矢 龍之介 氏(ソニー株式会社)
概要:近年、バーチャルプロダクションの進展により、実写映像と3DCGをリアルタイムに合成することで映像表現を高度化する取り組みが広がっている。しかし、実写と3DCGの位置関係を高精度に一致させるためには煩雑なキャリブレーション作業が必要であり、高コストかつ運用負荷が大きいという課題がある。さらに、キャリブレーションデータのゲームエンジンへの入力は各社独自フォーマットに依存しており、機器間の互換性にも制約がある。本発表では、カメラからリアルタイムにカメラおよびレンズの内部・外部パラメータを出力し、ゲームエンジンへ直接連携することで、プラグ&プレイでの実写CG合成を実現する手法を紹介する。加えて、接続フォーマットとしてオープンスタンダードであるOpenTrackIOを採用することで、異なる機器・ソフトウェア間における相互接続性を大幅に向上させる。実カメラ由来の内部・外部パラメータをリアルタイムに取得可能とすることで、コンピュータビジョンにおいて重要な幾何情報を提供し得る。本発表では、これらの情報が視覚情報処理にどのように活用され得るかについて論点を整理し、今後の応用に向けた議論の起点を提示する。
6月11日(木) 16:15~17:45 (IS2インタラクティブセッション内)



AIエージェント「Frontline Coordinator - Naivy」による現場作業支援
講師:中崎渓一郎 氏,井上祐貴 氏 ,大館良介 氏(株式会社日立製作所)
概要:現場作業の効率化を目的として、メタバース(仮想空間)に蓄積された情報と生成AIを統合したAIエージェントをシステム化し、作業効率を28%向上させました。本発表では、①設計知識と熟練者の作業手順を統合した「ナレッジグラフ」を構築し、現場状況に応じてナレッジグラフを探索することで作業効率化につなげる原因推定技術、②現場で撮影した画像から自己位置を推定し、タブレット端末を用いてメタバース上で直感的なナビゲーションを行う技術、③マルチエージェント構成により柔軟かつ高速な対話を実現し、ハルシネーション(誤情報の生成)を抑制する技術、の3点について、いかにAI技術を現場に適用したかに焦点を当ててご紹介します。

低解像度・非静止条件下で成立する実運用志向の虹彩・顔マルチモーダル認証
講師:庄司悠歩 氏、佐々木政人 氏、舟山知里 氏、赤司竜一 氏、荻野有加 氏、大塚陸人 氏、戸泉貴裕 氏、伊藤厚史 氏(NEC)
概要:虹彩認証は非接触で高精度な認証が可能である一方、高解像度の虹彩画像を撮影するため専用機器とユーザーの静止を前提としており、社会実装や大規模展開には制約があった。我々はこの前提を見直し、低解像度・汎用機器・非静止条件下でも成立する虹彩認証へと発想を転換した。本発表ではこれらの条件下において高い認証精度を実現する学習手法や画像品質に基づくデータ選択手法を紹介する。さらにコンパクトな汎用機器で顔と虹彩を同時に撮影しマルチモーダルに認証することで数億人規模の識別と実運用性が両立することを示す。
6月12日(金) 14:30~16:00 (IS3インタラクティブセッション内)

近距離小型ステレオカメラと学習型ステレオマッチングによる三次元取得とAIビジョンソリューション
講師:淺谷南己 氏(京セラ株式会社)
概要:本発表では,近距離域に特化した小型ステレオ構成と,多様な視差条件で学習したステレオマッチングAIにより,どのような三次元情報が得られるかを示す.あわせて,キャリブレーション,評価,保守,および3Dビジョンと制御系との連携において現場で論点となる事項を整理する.また,3Dビジョンと制御連携を含むAIビジョンソリューションでは,モデル作製・評価・保守支援の役割分担の一例を示す.これまでセンサ単体の提供を中心としてきた製品を,今後はソリューションの一部としても幅広く提供していく方針のもと,未解決課題や他センシング方式との適用境界について,産業界と学術界の双方からの議論を促すことを目指す.

画像技術で挑む実用志向の2領域:高精度異常検知と実世界ロボティクス
講師:橋本 学 氏,村上 尚生 氏,田上 鈴奈 氏 (中京大学)
概要:
高度AI時代を迎え,生産,物流,家庭などの分野では,実用技術への期待が高まっている.本発表では,最近,当研究室にて精力的に取り組んでいる,異常検知およびロボティクスの2領域に関して,5つの最新事例を紹介しつつ,できていること,できそうなこと,これから解くべき新たな課題を俯瞰する.
領域1.欠陥検出の精緻化・高速化を中心とした異常検知
異常検知では,画像単位だけでなく画素単位での検査精度が重視されている.従来手法特有の誤判定傾向を学習し,誤判定結果を自動的に正しくリファイン可能な機械学習モデルを紹介する.また,現実の生産現場では必須となる異常検知の高速化技術,さらには近年注目を集めている物品の数量異常のような「論理的異常」の高精度検出技術についても取り上げる.
領域2.自動調理のためのロボット動作生成と食材状態モニタリング
店舗や家庭での調理ロボットには,シンプルなレシピ文からの調理動作の生成のみならず,動作実行とタスクの完遂が求められる.調理中の食材状況をリアルタイムにモニタリングし,料理の完成タイミングを高精度に推定するCLIPベースの手法や,GPT等のLLMにより生成されたロボット動作手順を,現場の視覚情報に応じて自律的に修正してタスクを実行する技術を,デモ動画を交えて紹介する.
