教育セミナーのご案内

教育セミナーのご案内

教育セミナーを以下3社様ご協賛にて企画しております。
聴講者用弁当を配布予定です。

7月5日(土)ランチョンセミナー1

開催日時7月5日(土)12:00~13:00
共催武田薬品工業株式会社
テーマ新型コロナウイルスに関する基礎ウイルス学、新型コロナウイルスに関する臨床
演題名

演題名1:SARS-CoV-2の次期流行株予測とその展望

演題名2:新型コロナワクチンの有効性に関する研究

座長佐藤 佳 先生(東京大学医科学研究所 システムウイルス学分野)
演者

演者1:伊東 潤平 先生(東京大学医科学研究所 システムウイルス学分野)

演者2:森本 浩之輔 先生(長崎大学熱帯医学研究所 呼吸器ワクチン疫学分野)

抄録

SARS-CoV-2の次期流行株予測とその展望(伊東 潤平 先生)

ウイルス感染症の制御が難しい要因の一つは、ウイルスが進化し性質を変化させる点にある。COVID-19パンデミックでは、感染性や免疫逃避能を高め、適応度(流行拡大能力)を向上させた変異株が相次いで出現したことで、流行の制御が困難となった。

本講演では、2023年以降のSARS-CoV-2の進化の軌跡を俯瞰した後、適応度に基づく次期流行株の予測手法と、G2P-Japanコンソーシアムとの連携による予測株の迅速な性状解析およびリスク評価の取り組みについて紹介する。

さらに、変異株の適応度と進化を予測するAI「CoVFit」や、現在開発中のウイルス抗原性予測AI「PLANT」など、ウイルス感染症の制御に貢献する最先端AI技術についても紹介したい。

 

新型コロナワクチンの有効性に関する研究(森本 浩之輔 先生)

新型コロナワクチンは、一般の予想よりも早期に開発が進み2021年初頭から国内での接種が始まった。当時、主に海外における開発時の治験によるワクチンの有効性(efficacy)は知られていたが、国内でのデータは存在しておらず独自の研究による検証が必要であった。VERSUS研究は、2021年に入ってから準備を開始し5月に臨床研究の倫理委員会で承認され、感染者数が増えていく中、臨床現場での緊張感が高まっていた同年7月1日から症例登録を開始した。感染状況、接種の回数や接種からの時間経過、またウイルスの変異によってワクチンの有効性は変化することが予想されたため、長期的に観察する体制を構築した。

2021年夏に流行したデルタ株に対する有効性を10月に報告し、その後、広く最新のデータを社会に還元することを目的として、今日まで11件の報告書(2025年夏までに第12報を公開予定)、厚生労働省新型コロナウイルス感染対策アドバイザリーボードへのデータの提供、3件の論文、3回の厚生労働省予防接種委員会へのデータ提供を行なった。

今回のセミナーでは、近年の疫学的状況の検討に加え、VERSUS研究の最新のデータを含めた成果を紹介し、今後の新型コロナワクチン接種のあり方について議論したい。

7月5日(土)イブニングセミナー

開催日時7月5日(土)18:00~19:00
共催インスメッド合同会社
演題名肺非結核性抗酸菌症における最新の治療と病態:気道における粘液線毛クリアランスを中心に
座長南宮 湖 先生(慶應義塾大学医学部 感染症学教室)
演者朝倉 崇徳 先生(慶應義塾大学医学部 呼吸器内科)
抄録

結核性抗酸菌(NTM)は、結核菌群およびらい菌を除いた抗酸菌の総称であり、水や土壌に常在する弱毒菌である。現在では200菌種以上が報告されている。近年、肺NTM症の罹患率は世界的に上昇傾向にあり、特に高齢化が進む我が国においては、すでに肺結核の罹患率を上回っていることが報告されている。肺NTM症は、中高年の女性や基礎疾患として既存の肺疾患を有する患者に好発し、慢性進行性の呼吸器感染症を引き起こす。治療は多剤抗菌薬療法が基本であるが、近年はアミカシンリポソーム吸入製剤などの新たな治療戦略も登場している。しかしながら、再発や再感染率の高さが依然として臨床上の課題となっている。

NTMは環境中に常在する弱毒菌であるにもかかわらず、肺感染症として成立する背景には、宿主因子の異常が関与している可能性が高い。アジア人の罹患率の高さ、家族内集積、やせ型の中高年女性に好発することなどから、遺伝的素因や女性ホルモンの関与が示唆されている。さらに、標準治療終了後の再発率が約40%に達し、その多くが遺伝的に異なる菌株による再感染であることは、宿主の気道環境における防御機構の破綻を強く示唆している。

本講演では肺NTM症の疫学、診断、治療に関する最新知見を概説した上で、気道防御機構の一つである粘液線毛クリアランス(MCC)に焦点を当てる。MCCは、気道上皮の杯細胞および粘液細胞から分泌されるムチン(MUC5B、MUC5AC)と、線毛上皮細胞の協調的な運動によって構成される。しかし、線毛運動の低下や粘液層の物理的性状の変化が生じると、MCC機能は障害され、粘液の産生・貯留が進行し、最終的には粘液栓の形成に至る。MCC異常に伴う粘液による気道閉塞は、局所の低酸素状態や病原体の定着を促進し、慢性下気道感染を助長する。一方で、感染そのものが粘液の過剰産生や線毛機能の障害を引き起こすことも知られており、相互に悪化させ合う悪循環を形成している。

肺NTM症に併存しやすい気管支拡張症の病態においては、線毛機能不全、粘液分泌異常、炎症性サイトカイン環境の変化が、慢性感染をどのように助長するかについて紹介する。また、MCC機能の低下が、ウイルス感染、とくにSARS-CoV-2のような呼吸器ウイルスに対する感受性に与える影響にも言及し、気道防御機構研究の広がりと将来的な展望についても述べたい。

7月6日(日)ランチョンセミナー2

開催日時7月6日(日)12:00~13:00
共催ファイザー株式会社 メディカルアフェアーズ
テーマ「新型コロナウイルスに関する基礎免疫学」、「新型コロナウイルスに関する臨床」、「新型コロナウイルスに関する公衆衛生学」
演題名COVID19ワクチンの評価と基礎研究データの活用
座長佐藤 佳 先生(東京大学医科学研究所 システムウイルス学分野)
演者谷口 清州(独立行政法人国立病院機構三重病院 小児科)
抄録中国に端を発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はグローバル化した世界に瞬く間に広がった。日本では「コロナ禍」と称されたこの健康危機に対して、人類はその科学を結集して対抗した。そのひとつとして人類史上初となるmRNAワクチンがあり、240万人の生命を救い、もしワクチンがより公平に配付されていたら、更に67万人の生命が救われただろうと報告されている。
日本では2021年春からコロナワクチンの接種が開始されて、WHOの報告では2021年だけで世界で計1440万人の命を救ったと推測されているものの、オミクロン株の流行以降、症状の軽症化とともに、ワクチン離れが徐々に広がった。2024年10月から定期接種となったが、これまでのところワクチン接種率は伸び悩んでいる。
これには、COVID-19の5類移行により「ただの風邪」という一般認識が広がったことも関与すると思われるが、実際には死亡診断書情報を用いたCOVID-19関連死亡数をみると、2023年冬から2024年春までの流行期には全国で約 13,000 例の死亡例が報告されおり、これはパンデミック最中の第5波、第6波での死亡者数と大きくは変わらず、国立病院機構のNHO Clinical Data Archive (NCDA)のデータからも入院例における人工呼吸器率や死亡退院率などの重症度は変わっておらず、COVID-19は依然として、特にハイリスク者においてインパクトは大きく、近年後遺症についても多数のエビデンスが蓄積されつつある。一方では、ワクチンによる有害事象について、個別症例における因果関係の評価はきわめて難しく、集団としての評価が望まれるところであるが、残念ながら我が国には米国のVSDのような客観的な評価システムが無い。
現状の課題は、現状のCOVID-19のインパクトとワクチンに関する効果や副反応について正確な情報が十分に伝わっていないことである。現実世界における疾病負荷を実際のデータをもって、またワクチンのモダリティとその特徴についても、その根底にあるメカニズムを含めてみなさんが納得出来るような形でわかりやすく説明していく必要があり、まさに、原理から表現型への合理的な説明を行っていかねばならないと考える。そのためにも基礎データと臨床データを組み合わせて包括的に共有出来るような環境が大切だと考える。