講演情報
[FB3-01]新規的・独創的に生物多様性・生態系を観測する:平成29年7月九州北部豪雨後の生物調査での試み
*鬼倉 徳雄1、乾 隆帝2、中島 淳3、栗田 喜久1 (1. 九州大学大学院・農、2. 福岡工業大学・社環、3. 福岡県・保環研)
河川生態学術研究会 筑後川Gでは、平成29年7月九州北部豪雨後の生態系の回復過程を追跡してきた。そして、その後の災害復旧を目的とした大規模な河川改修の影響、さらには令和5年に新たに生じた豪雨の影響を調査してきた。その中で、生物多様性の回復に着目して研究を進めるうえで、難しい点もあった。例えば、生態系に大きなインパクトを与える災害はどこで発生するか、事前に分からないため、被災前の生物の状態が把握できていない点である。また、広域的に被災したケースでは、その生物調査のエリアも広域的であることが望ましいが、時間と労力を考えた時、広域的な採捕調査は難しいこと、被災河川に魚類などのメジャーな水生生物が生息しない場合でも、何かしらの分類群で評価を試みる必要があることなども研究当初の課題であった。その他、大規模河川改修が確定した川に「種の保存法」の指定種が生息した場合の緊急対応、そして、災害や河川改修の影響調査がほとんど行われてこなかった遺伝子レベルでの評価なども、本グループで取り組んできた。今回は、約5年間の研究の中で実践してきた、新規的あるいは独創的な生物多様性評価・生態系評価について紹介したい。