自由集会
2026年10月10日(土) 13時30分 〜 15時00分
自由集会1:
市民参加eDNA観測は社会インフラになるか
企画者:垣田 真奈美(株式会社豊田中央研究所)、長谷部 勇太(神奈川県環境科学センター)、佐藤 修正・近藤 倫生(東北大学)
環境DNA技術の発展により、生物多様性観測は研究者だけでなく、市民、自治体、企業など多様な主体が参加できる段階へと進みつつある。本集会では、Koro-rinによるモビリティを活用した陸域環境DNA観測、自治体による市民参加型生物多様性観測、アカデミアによる土壌微生物を対象としたシチズンサイエンスなど、多様な実践事例を紹介する。その上で、サンプリング手法の標準化、メタデータ管理、データ品質の確保、参加者へのフィードバック、継続的な運営体制などに共通する課題を議論し、盛り上がりつつある市民参加型環境DNA観測を社会インフラへ発展させるための設計原理と将来像を展望する。
◎講演内容
- 講演1「Koro-rin法による参加型環境DNA観測の社会実装に向けて」
垣田 真奈美(株式会社豊田中央研究所)
Koro-rin法は、誰でも簡便かつ再現性高く陸域環境DNAを採取できることを目指して開発したサンプリング/解析手法である。本発表では、「日常の移動を生物多様性観測へとつなげる」参加型プロジェクトで得られた知見をもとに、研究用途に留まらず多様な主体が協働して継続利用できる観測手法の設計について紹介する。特に、現場運用の簡便化や品質確保のための工夫、参加者が無理なく継続できる仕組みづくりに焦点を当て、市民参加型環境DNA観測の実装に向けた課題と展望を議論する。 - 講演2「市民科学の新たな潮流 -環境DNAで知ろう、考えよう身近な自然-」
長谷部 勇太(神奈川県環境科学センター)
神奈川県では、生物多様性への理解と行動を広げるため、令和5年度から市民・高校生が参加する河川環境DNA調査を実施している。令和7年度は17河川90地点で調査し、魚類・昆虫・哺乳類など計732種・属を検出した。外来ドジョウやオヤニラミ、ガー類のDNAも確認され、外来種の侵入把握に有効性を示した。調査結果は複数の市にも提供され、市民調査のデータは、生物相の把握、希少種保全、外来種の早期発見・防除を支える基盤となりつつある。今後は、生物多様性そのものの価値が十分に評価され、生物相を調べる意義がさらに高まることが課題である。 - 講演3「市民と探索する地球冷却微生物―広域土壌微生物観測への挑戦」
大久保 智司、加藤 広海、青木 祐一(東北大学)
温室効果ガスである一酸化二窒素(N₂O)を削減する微生物を土壌から見つけることを目的として、市民参加型プロジェクト「地球冷却微生物を探せ」を進めている。本講演では、参加者による全国各地での土壌採取と実験、環境情報の記録、微生物群集の解析を組み合わせ、未知の候補微生物とその生息環境を探索する独自の取り組みを紹介する。また、参加者に解析結果を返し、現場での体験を新たな問いや探索へつなげる仕組みについても取り上げる。広域・多地点の試料を市民と集めるからこそ可能になる研究の面白さとともに、データの品質、科学的成果と参加価値の両立、今後の展開について議論したい。 - パネルディスカッション
モデレータ 近藤 倫生(東北大学)
2026年10月11日(日) 11時00分 〜 12時30分
自由集会2:
環境DNA 実装現場の最前線
企画者:村岡 敬子・柞磨 佑紀・伊藤 一芽(国立研究開発法人 土木研究所)、真木 伸隆・立松 俊和(パシフィックコンサルタンツ株式会社)、澤樹 征司・堀 裕和・大須賀 麻希・塚越 優喜(株式会社建設技術研究所)
環境DNA技術は、河川、湖沼、沿岸・海域、陸域へと活用範囲を広げ、河川水辺の国勢調査への導入をはじめ、行政施策や自然環境管理における社会実装が進みつつある。魚類相や希少種の把握に加え、海洋環境評価、農林水産分野、オンサイト分析など、多様な分野で技術開発と実装が進められている。本自由集会では、国の研究機関がそれぞれの最新の取り組みと現場課題を紹介し、パネルディスカッションを通じて、分野横断的な活用可能性と今後の展望を議論する。環境DNA技術の現在地を共有し、環境モニタリングや生物多様性保全を支えるネイチャーテックとしての役割を考える。
◎講演内容
- 司会
真木 伸隆(パフィシックコンサルタンツ株式会社) - 講演1「環境研究を支える環境DNA解析の広がり」
今藤 夏子(国立研究開発法人 国立環境研究所)
生物多様性の重要性に対する社会的関心の高まりを背景に、生物多様性情報の需要が急速に増加している。近年は環境DNA解析技術の普及によって生物多様性情報を活用した複合的な環境研究が実施可能となり、その活用範囲は大きく広がっている。従来の生物多様性モニタリングや課題解決型研究に加え、生物分野以外の環境研究との連携、さらには地方環境研究所等に対する解析支援のニーズも高まっている。本講演では、こうした状況を踏まえ、環境DNA解析技術に関する国立環境研究所の多様な研究と取り組みを紹介する。 - 講演2「水田生態系の生物多様性モニタリング」
山本 哲史(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)
多様な生物が出現する水田生態系の生物調査には高度な専門知識が必要であったが、環境DNA分析は生物調査のハードルを大きく引き下げる。本講演では水田での環境DNA研究事例を紹介し、将来的に環境DNAが水田生態系における生物多様性モニタリングにどう実装されるかを考える。 - 講演3「港湾分野における研究と現場の現状」
細川 真也(国立研究開発法人 港湾空港技術研究所)
港湾の分野では、環境DNA技術の知識はようやく浸透し始めているという段階であるが、その実務への利用の可能性については高い関心が持たれている。港湾が位置する沿岸域では、潮汐による輸送、川からの流入の影響、人の活動の影響など、環境DNAの時空間分布を決める多くの要素が存在し、解像できる時空間スケールを明らかにする事が課題であった。しかし、研究の順調な進展により、次は、現場の実務へ浸透させるために、どのような目的に対して、環境DNAをどのように使えばいいのかを考えるフェーズに入っている状況である。講演では、我々のこれまでの研究成果と実務へ向けた現在地について話題を提供する。 - 講演4「海草・海藻藻場の二酸化炭素貯留プロセスを推定する」
堀 正和(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所)
環境省は2024年、我が国の温室効果ガスインベントリに海洋の海草・海藻藻場を吸収源として世界で初めて登録し、その方法論を公開した。方法論では、藻場面積の時系列数値の算定方法は国土交通省で構築され、それに乗じる吸収係数(単位面積当たりの二酸化炭素吸収量)は水産研究・教育機構が代表機関として実施した農林水産省事業において構築された。その構築において、藻場から流出した二酸化炭素由来の有機炭素が海中を漂い、最終的に数百年から数千年の貯留に移行するプロセスとその貯留量の解明に環境DNAが活用された事例を紹介する。 - 講演5「eDNAサンプラーを用いたサンプル採取自動化の取り組み」
福場 辰洋(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)
我々はこれまでに、環境DNAサンプル採取の無人化による省力化・低コスト化・高品質化を実現し、環境DNA観測網の拡充に貢献するため、完全自動化された装置「eDNAサンプラー」の開発と海洋・湖沼などの実環境における実証試験を繰り返してきている。これまでに12サンプルの採取が可能な浮体型サンプラーや、未経験者による船上での簡便な採取を可能とするサンプラー、深海対応の大流量サンプラー等を実用化してきている。またこれらの装置についてはすでに民間事業者からの装置およびサービスの提供が可能な状況となっている。ここではeDNAサンプラーを用いたサンプル採取自動化の取り組みについて紹介する。 - 総合討論
| 座長 | 源 利文(神戸大学) |
| コメンテーター | 宮脇 成生(株式会社 建設環境研究所) 吉川 ひとみ(警察庁科学警察研究所) 保高 徹生(国研 産業技術総合研究所) 鶴田 舞(国研 土木研究所) 今藤 夏子(国研 国立環境研究所) 山本 哲史(国研 農業・食品産業技術総合研究機構) 細川 真也(国研 港湾空港技術研究所) 堀 正和(国研 水産研究・教育機構 水産資源研究所) 福場 辰洋(国研 海洋研究開発機構) |
