講演情報

[T1-O-10]広域応力状態を加味した流体供給源周辺の応力場モデル

*安邊 啓明1,2 (1. 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門、2. 日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)
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キーワード:

岩脈、泥ダイアピル、応力、McTigueモデル、マルコフ連鎖モンテカルロ法


 マグマだまりのような流体供給源周辺の応力場は,局所的な放射状の圧縮応力と広域応力状態の重ね合わせによって定性的に説明できる.本研究は,広域応力を考慮した流体供給源周辺の応力場モデルを新たに提案する.また,提案したモデルに基づき,岩脈群の方位分布を利用した応力場逆解析手法を開発し,天然の泥ダイアピルに伴う泥岩脈群に適用した.
McTigue (1987) は半無限弾性体中の球状圧縮源に伴う応力場を近似的に算出した.本研究は,広域応力が深さ方向に線形に増大し水平方向に一様であると仮定し,McTigueモデルに広域応力を重ね合わせたものを新たな応力場モデルとして提案する.このモデルは,水平面内で異方的な応力場を表現できる.
新たな応力場モデルに基づく逆解析手法を,田辺層群の鳥の巣地域に貫入した泥岩脈群に対し適用する.紀伊半島南西部に分布する中新統田辺層群は古前弧海盆堆積物である.田辺層群には複数の泥ダイアピルとそれに伴う多数の砕屑岩脈が貫入している.調査を行った鳥の巣地域には,多数の泥岩脈が貫入している.この地域では,砂質泥岩と暴浪時の薄い砂岩層との互層からなる陸棚相と,ハンモック状斜交層理を示す砂岩層とトラフ型斜交層理を示す砂岩礫岩層からなる外浜相によって構成される,波浪卓越型沿岸システムの堆積物が分布する.これら堆積物に多数の泥岩脈が貫入しており,陸棚相では各岩脈が薄く,多数の岩脈が貫入しているのに対し,外浜相では少数の岩脈が厚く貫入している.泥ダイアピルは調査地域内で見出されていない.
まず,調査地域を数十から数百m規模の区画に分け,区画ごとに測定した泥岩脈の方位分布を混合ビンガム分布法 (Yamaji & Sato, 2011) で解析した.調査地域全体で南北走向の岩脈が卓越する傾向は,この地域全体に東西方向のσ3軸を持つ応力が広域応力として働いたことを示唆する.区画ごとのσ3軸の方向は,調査地域北部では東西でよく揃うのに対し,南部ではばらつきがある.岩脈の貫入密度は,北から南に向かって増大する.これらのことから,調査地域の岩脈を形成した泥漿が調査地域南部から供給されたと考えられる.応力の型に注目すると,南から北に向かって正断層型応力,σ1軸が南にプランジした応力,横ずれ断層型応力と変化する.これは,調査地域南部に流体供給源が存在する場合にMcTigueモデルで予想される傾向と一致する.
各区画で推定した応力状態を基に,本研究が提案する応力場モデルの変数を逆解析で求めた.各区画で推定された応力状態とモデル応力状態の応力角距離がフォンミーゼスフィッシャー分布に従うと仮定し,解の探索はMCMC法で行った.逆解析の結果,流体供給源の位置は調査地域南部の数百メートルの範囲に制約された.これは定性的に推定した位置と整合的である.広域応力は東西引張の正断層型応力と推定された.これは,田辺層群の他地域の砕屑岩脈から推定された応力 (Abe & Sato, 2025) と整合的である.
本研究のモデルは,火山活動中心の特定や,火山活動の影響範囲のより正確な推定を可能にし,火山防災や地層処分事業に貢献すると期待される.
<謝辞> 本報告は経済産業省の委託事業「令和5–8年度放射性廃棄物に係る重要な基礎的技術に関する研究調査の支援等に関する業務」の成果の一部である.
<参考文献> Abe & Sato, 2025, Isl. Arc 34, e70007. McTigue, 1987, J. Geophys. Res. 92, 12931–12940; Yamaji & Sato, 2011, J. Struct. Geol. 33, 1148–1157.

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