講演情報

[T1-O-12]近畿地方周辺の活断層群の応力・摩擦係数逆解析

*佐藤 活志1 (1. 京都大学)
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【ハイライト講演】   本講演は,断層面の方位分布と摩擦係数を考慮した新しい応力逆解析法に関する内容の講演である.この解析手法により,応力分解能の向上と摩擦係数が決定できることが示されている.講演では近畿地方の活断層群を対象にこの新しい解析手法による応力解析を行っており,近畿地方の活断層群は,既存の弱面を利用して活動しているものが多く,摩擦係数が小さい場合,断層姿勢が必ずしも現世応力場に最適でなくても活動しうることを明らかにしている.※ハイライト講演とは...

キーワード:

活断層、応力逆解析、摩擦係数、近畿地方


 近畿地方とその周辺には多数の逆断層や横ずれ断層からなる活断層群が発達し,それらはおおよそ東西方向の圧縮応力を受けて活発に活動していると考えられている.Tsutsumi et al. (2012)は,WNW-ESE方向の軸性圧縮応力を想定することで,近畿周辺の活断層群の変位方向(逆断層と横ずれ断層の両方)が統一的に説明できることを示した.このことは,約200 kmに及ぶ解析範囲において,一様な応力場が数十万年の時間スケールで安定であったことを示唆する.しかしながら,解析された活断層群の方位分布を詳細に観察すると,断層面の方位には偏りがあり,いくつかの集中方向のクラスターがみられる.断層面は第四紀以前のテクトニックなイベントで形成された可能性があるので,活断層を駆動した応力との直接の関係を論じることは難しいが,クラスターごとに別の応力のもとで活動した可能性は十分にある.そこで本研究は,断層面の方位分布を考慮しながら応力と摩擦係数を決定する逆解析法(Sato, 2026)を用いて,近畿周辺の活断層群を再解析した.

Tsutsumi et al. (2012)が用いた応力逆解析法(Sato, 2006)は,断層の変位方向が剪断応力と平行である(Wallace-Bott仮説)と仮定して応力を最適化する.これに対しSato (2026)の手法は,応力,摩擦係数および断層面の方位によって決まるfault instability(断層不安定度)を大きく保ちながら,Wallace-Bott仮説からの逸脱を小さくするように,応力と摩擦係数を最適化する.これにより,応力の分解能が高まることと,摩擦係数を決定できることが利点である.

解析の結果,横ずれ断層型応力(応力比は中程度,すなわち三軸応力)と逆断層型応力(応力比は小さい,すなわち軸性圧縮応力に近い)の2つの応力が得られた.両応力の最大圧縮主応力(σ1)軸は共通しており,おおよそWNW-ESE方向で水平に近かった.横ずれ断層型応力に適合する断層群の摩擦係数の最適値は0に近い.逆断層型応力に適合する断層群の摩擦係数の最適値は約0.8であった.両応力に対してfault instabilityが小さい断層も多数あった.また,横ずれ断層群と逆断層群の空間的な棲み分けは明瞭ではなかった.

以上の結果は,既存の弱面を利用して活動する「成熟した」活断層が多数あり,応力に対して最適な方向の断層面でなくとも摩擦強度が小さいために活動していることを示している.逆断層型応力に対しては,新規に形成された断層が一定数含まれると考えられる.また,地域全体を俯瞰すれば中間圧縮主応力(σ2)軸と最小圧縮主応力(σ3)軸が入れ替わりやすく,両主応力が共に小さいことを示唆している.

引用文献
Sato, 2006, Tectonophysics, 421, 319-330.
Sato, 2026, Journal of Structural Geology, 203, 105601.
Tsutsumi et al., 2012, Geophysical Research Letters, 39, L23303.

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