講演情報

[T16-O-2]房総半島東部,勝浦市尾名浦における上総層群基底の層序学的実態と堆積年代

*宇都宮 正志1、羽田 裕貴1 (1. 産総研地質調査総合センター)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

上総層群、黒滝層、テフラ、石灰質ナノ化石、古地磁気層序

 房総半島に露出する安房層群もしくは三浦層群(中新統から鮮新統)と上総層群(鮮新統から更新統)の境界は「黒滝不整合」[1]と呼ばれる.Utsunomiya et al. [2]は約3.2 Maの海底地すべりによる侵食イベントにより「黒滝不整合」の原型が形成された後,局所的なチャネルや傾斜不整合の形成を伴いながら地域ごとに異なる年代間隙が形成されたというモデルを提案した.本研究では年代層序をより詳細化する目的で,千葉県勝浦市尾名浦において上部鮮新統から下部更新統の層序関係を再調査した結果,新たに広域テフラと古地磁気の極性変化を認識したので報告する.
勝浦市尾名浦には安房層群清澄層と,それを覆う層厚20から25 mの凝灰質泥質砂岩及び砂質泥岩から成る地層が露出する.後者は先行研究 [2, 3] で上総層群黒滝層とされたが,本論では既存の累層区分に当てはめずに便宜的に尾名浦相と呼ぶ.尾名浦相基底では層厚50 cmの礫質砂岩層は清澄層の砂勝ち砂岩泥岩互層を覆い,平行不整合の形態をなす.尾名浦相の内部にも傾斜不整合があり,この不整合を挟んで下位の地層を下部尾名浦相,上位を上部尾名浦相と呼ぶ.
石灰質ナノ化石層序に基づくと,下部尾名浦相の基底から約10.5 m上位までの層準からはDiscoaster tamailisが産出し,Reticulofenestra pseudoumbilicusは産出しない.このことから,下部尾名浦相のこの層準は,Okada and Bukry (1980) のCN12a亜帯(約3.82~2.76 Ma)に対比され,またSphenolithus spp. は認められないことから約3.61~2.76 Maの間の年代に制約される.また,上部尾名浦相の基底から約7 mまではD. tamalisが産出せずDiscoaster surculusが産出することからCN12b亜帯に対比される.
下部尾名浦相の基底から約16 m上位にはテフラ鍵層Onrが挟在し,火山ガラスの化学組成等に基づきUN-MD2に対比されている[2].今回新たに上部尾名浦相の基底から約7 m上位にざくろ石を含む特徴的なテフラ層を確認し,火山ガラスの屈折率と化学組成分析を行った結果,丹沢を給源とし相模原や鎌倉,銚子地域などで報告されているTn-GP [4] と対比された.
古地磁気分析の結果,下部尾名浦相のCN12b亜帯の中で正磁極性を見出しGauss正磁極帯最上位の正磁極亜帯であるC2An.1nに対比された.また上部尾名浦相ではCN12b亜帯もしくはCN12b-c亜帯内で逆磁極性が認められMatuyama逆磁極帯の最下部C2r.2rに対比された.したがって下部尾名浦相と上部尾名浦相の間に,Gauss正磁極帯とMatuyama逆磁極帯の境界(2.58 Ma)が存在すると考えられるが,境界そのものは断層で欠落していると考えられる.
安房層群を平行不整合で覆う下部尾名浦相と同様にCN12a亜帯に対比される可能性がある地層は,房総半島北東部,千葉県山武市蓮沼の九十九里浜低地で掘削された地震観測井(蓮沼観測井:深度 1661 m)の最下部(1530 mから1580 m)でも確認されている[5].また,銚子の犬吠層群名洗層でも尾名浦相のテフラ層OnrとOngに対比されるテフラ層が挟在することから[2, 4],尾名浦相と名洗層はほぼ同時に堆積した地層とみなせる.このように,下部尾名浦相に相当する地層は,三浦半島や房総半島および銚子半島にかけていわゆる「黒滝不整合」と推定されている層準に広く分布している可能性が高い.

[1] 小池 清 (1951) 地質雑,57, 143‒156.[2] Utsunomiya, M.et al. (2023) PEPS, 10, 25.[3] 伊藤 慎ほか (1992) 堆積学研究会報36, 9‒17.[4] 田村糸子ほか(2010)地質雑, 116, 360‒373.[5] 林 広樹ほか(2009) 防災科学技術研究所研究報告, no.73, 19‒39.

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン