講演情報
[T16-O-9]能登半島における2回の暁新世火成活動:ジルコンU–Pb年代測定からの新たな証拠
*長田 充弘1、山田 来樹2、仁木 創太3、平田 岳史4 (1. 日本大学文理学部地球科学科、2. 産業技術総合研究所地質調査総合センター、3. 名古屋大学宇宙地球環境研究所、4. 東京大学大学院理学系研究科附属地殻化学実験施設)
キーワード:
新生代、石川県、暁新世、ウラン–鉛年代、ジルコン
日本海形成以前の西南日本では,前期白亜紀~古第三紀前期(約110 Maから60 Ma)に広域的な火成活動が存在したことが知られている.しかし,中部地方ではそれらにかかわる研究は主に飛驒山地の火山岩類(例えば,濃飛流紋岩)や領家–山陽帯の深成岩類から報告されており,それより北側の火成岩類はあまり重要視されてこなかった.一方,能登半島には周囲の新生界よりも古い暁新世~始新世のK–Ar年代を示す火山岩類が報告されていたが(塚本,1988),その年代の信頼性は十分に検証されていない.本研究では,これらの火山岩類を対象にジルコンU–Pb年代測定を行い,形成時期とその地質学的意義を再検討した.
能登半島の地質は,一般に飛驒帯の深成岩類・変成岩類を基盤とし,漸新世以降の火山岩類および堆積岩類からなる(例えば,尾崎,2010).一方,その中には約57–46 Maの全岩K–Ar年代が報告されている火山岩類が点在する.本研究では,それらのうち大角間層および太田原層(仮称)を対象とした.大角間層は流紋岩質溶岩および同質火山砕屑岩からなり(冨岡・佐藤,2007),45.7 Maの全岩K–Ar年代が報告されている(塚本,1988).太田原層は現在,高洲山層に含められることが多いが(例えば,尾崎,2010),①高洲山層から報告されている年代(約33–20 Ma)より著しく古いK–Ar年代(56.7および52.1 Ma)を示すこと(柴田ほか,1981;塚本,1988;陳ほか,2020),②石基組織など岩石学的特徴が高洲山層と異なること(梅香・石渡,2004)から,本研究ではこれらを高洲山層から分離し,模式地を石川県鳳珠郡能登町太田原およびその周辺として,主に安山岩質溶岩からなる地層を太田原層(仮称)とした.
大角間層の流紋岩および太田原層の安山岩から分離したジルコンを東京大学大学院理学系研究科附属地殻化学実験施設のLA–MC–ICP–MSを用いて分析した結果,それぞれ64.8 ± 0.5 Maおよび61.2 ± 0.3 Ma(いずれも2σ)の206Pb/238U年代の加重平均値を得た.
これらは既報のK–Ar年代より約10–20 Myr古い値を示し,K–Ar年代は漸新世以降の火成活動によって若返った可能性を示唆する.従って,大角間層および太田原層はいずれも暁新世Danian~Selandian期に形成されたと考えられる.このようなK–Ar年代の若返りは,中部地方の庄川火山-深成複合岩体(太美山層群など)からも報告されており(例えば,棚瀬ほか,2005;金子ほか,2019),能登半島の暁新世火山岩類も庄川火山-深成複合岩体を構成する火成活動の北方延長に位置づけられる可能性がある.本研究は,能登半島における2回の暁新世火成活動をジルコンU–Pb年代によって実証したものであり,日本海形成以前の西南日本弧における暁新世火成活動の分布および火成活動史を再検討する上で重要な年代学的制約を与える.発表では,能登半島で認められた2回の暁新世火成活動の意義を説明するとともに,日本海形成以前の西南日本弧における古第三紀火成活動の時空間変遷に対する新たな地質学的解釈について議論する.
陳ほか,2020,Abst., JpGU-AGU Joint Meet. 2020, SGL34-P07./金子ほか,2019,地質雑,125,781–792./尾崎,2010,海陸シームレス地質情報集,能登半島北部,数値地質図 S-1,15p./柴田ほか,1981,岩石鉱物鉱床学会誌,76,248–252./棚瀬ほか,2005,地団研専報,53,143–157./冨岡・佐藤,2007,地震研彙報,82,255–264./塚本,1988, 石川県地質誌.225–226./梅香・石渡,2004,日本地質学会第111年学術大会講演要旨,180.
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