講演情報

[G-P-37]新潟県糸魚川地域に分布する秋吉帯珪質岩-砕屑岩の岩相と放散虫化石年代

*正田 智也1、栗原 敏之1 (1. 新潟大学)
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【ハイライト講演】  秋吉帯のペルム紀付加体は石灰岩と珪質岩−砕屑岩と年代幅が異なり,石炭紀の珪質岩は極めて稀である.糸魚川地域の秋吉帯には暗赤褐色珪質岩の分布が知られているが,この地層の年代や海洋プレート層序での位置付けは不明であった.今回,正田智也氏はこれと周囲の岩相記載と放散虫年代と検討し,後期デボン紀から前期石炭紀の可能性を示唆した上で,海洋プレート層序での位置付けを提案するものである. ※ハイライト講演とは...

キーワード:

秋吉帯、姫川コンプレックス、珪質岩、放散虫、石炭紀


 秋吉帯は,北九州から中国地方を経て新潟県糸魚川地域に分布し,海山型石灰岩とその周囲に分布する珪質岩-砕屑岩で構成されるペルム紀付加体である(Kanmera et al., 1990;脇田,2023).秋吉帯の石灰岩体は前期石炭紀から中期ペルム紀に至る層序記録が認められるのに対し,珪質岩-砕屑岩は前期ペルム紀から中期ペルム紀までのものがほとんどであり,石炭紀の珪質岩の分布は極めて断片的である(Wakita and Kametaka, 2024). 秋吉帯東端の糸魚川地域には石灰岩体の青海コンプレックスと珪質岩-砕屑岩の姫川コンプレックスが分布し(竹内・中澤,2010),虫川上流の姫川コンプレックスでは珪質泥岩から中期ペルム紀の放散虫化石が報告されている(田沢,1984;宇次原,1985;河合・竹内,2001).また,竹内・中澤(2010)では珪質泥岩とは異なる岩相の暗赤褐色泥岩の分布が示されているが,その年代や海洋プレート層序における位置づけは明らかにされていない.本研究では,虫川上流に露出する秋吉帯の珪質岩-砕屑岩の岩相記載および産出する放散虫化石に基づく年代の検討を行った. 
 虫川上流沿いに分布する珪質岩-砕屑岩は,Unit 1:暗赤褐色珪質泥岩,Unit 2:黒褐色泥岩,Unit 3:赤色層状チャートおよび挟在する石灰質砂岩,Unit 4:珪質泥岩および珪質泥岩と酸性凝灰岩の互層,Unit 5:砂岩・泥岩の5つに区分され,全体的に南北走向・西傾斜を示す.Unit 4-Unit 5境界では,緑色凝灰岩黒色泥岩互層を伴った漸移的な境界が観察されているが,その他のUnit境界は破砕帯を伴う断層である.
 Unit 1の暗赤褐色珪質泥岩は,海綿骨針や斜長石に富み,これらが密集した層厚1cm程度の白色ラミナ密集層が発達する.保存状態は不良であるものの,後期デボン紀から前期石炭紀に繁栄したTrilonche属やLatentifistula属に類似する放散虫が得られ,暗赤褐色珪質泥岩は後期デボン紀から前期石炭紀に堆積した可能性が高い.なお,堆積環境の解釈については今後の検討が必要である.Unit 2の黒褐色泥岩は斜長石や玄武岩片を含む.Unit 3の赤色層状チャートからは下部ペルム系で多く見られるPseudoalbaillella scalprataが得られた.赤色層状チャートに狭在する石灰質砂岩は浅海成石灰岩由来の砕屑物を多く含むことから,Unit 3は海山に近接する深海底で堆積したと考えられる.Unit 4では,Unit 5との境界付近に露出する緑色凝灰岩黒色泥岩互層から中期ペルム紀Capitanianの前期を示すParafollicucullus属,Parafollicucullinoides属およびFollicucullus属放散虫が得られた.よってUnit 4は,大陸起源の火山灰が供給される半遠洋域の深海底を堆積場としていたが,中期ペルム紀Capitanianの前期には海溝域へ移動し,Unit 5の砕屑岩の堆積が始まったと考えられる. 
 以上をまとめると,本研究により新潟県糸魚川市の虫川上流沿いに露出する岩相には,従来知られていた前期ペルム紀から中期ペルム紀の珪質岩-砕屑岩とは別に,後期デボン紀から前期石炭紀の可能性がある暗赤褐色珪質泥岩の分布が明らかになった.これは秋吉帯の珪質岩としては最も古いものである可能性があり,ペルム紀以前の秋吉帯の海洋プレート層序を復元する上で重要である.

引用文献:Kanmera et al. (1990) Pre-Cretaceous terranes of Japan. Nippon Insatsu Shuppan, 49–62;河合・竹内(2001)大阪微化石研究会誌,特別号,no. 12,23–32;竹内・中澤(2010)小滝地域の地質,第4章秋吉帯.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅).産総研地質調査総合センター,15–28.;田沢(1984)地球科学,38,264–267;宇治原(1985)総合研究「上越帯・足尾帯」研究報告,2,159–168;脇田(2023)山口学研究,2,45–53;Wakita and Kametaka (2024) Journal of the Geological Society, 181, No. 3, jgs2023-170.

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