講演情報
[G-P-45]新潟県出雲崎町小木ノ城地域の鮮新統ー更新統西山層における放散虫生層序:放散虫群集から推定される対馬暖流の流入について
*福田 智子1、栗原 敏之2 (1. 新潟大学大学院総合学術研究科、2. 新潟大学理学部)
【ハイライト講演】 背弧域での鮮新・更新統の代表である西山層では微化石・古地磁気・テフラ層序などにより年代層序が編まれているが,放散虫はアップデートが必要な状態にある.特に暖流指標種を正確に認定し,これらを全体の層序の中に位置づけることが必要である.今回,福田智子氏は放散虫の群集解析を行い,No.2 G. inflata bedより下位の暖流流入を示唆する結果を得た. ※ハイライト講演とは...
キーワード:
放散虫、鮮新世、更新世、対馬暖流、西山層
近年,日本海で行われた国際深海掘削計画や日本海沿岸各地において,鮮新世から更新世を対象に,浮遊性有孔虫化石,珪藻化石,放散虫化石の種構成の変化から日本海に流入する暖流の時期などに着目した古海洋環境が検討されている(Alexandrovich, 1992;柳沢・天野,2003;Kitamura and Kimoto, 2006;上栗・本山,2007;Matsuzaki et al., 2018など).新潟県出雲崎町小木ノ城地域に分布する鮮新統-更新統西山層は,微化石,古地磁気層序,火山灰等の様々な手法により年代が推定されており(佐藤ほか,1987;岸・宮脇,1996など),どの時期に暖流が流入したかを検討するに当たり重要である.特に,放散虫化石の研究においては,中世古ほか(1972)により群集が検討されているものの,産出種の詳細とそれらの変化については再検討が必要である.そこで本研究では,西山層において放散虫生層序を再検討し,産出する放散虫の生態的特徴から古海洋環境の検討を行った.
新潟県出雲崎町小木ノ城地域の鮮新統-更新統は,下位から椎谷層,西山層および灰爪層に区分されている(小林ほか,1993).このうち,西山層は,最下部が泥岩優勢砂岩泥岩互層,その上位が青緑色塊状泥岩で構成され,泥岩は放散虫化石を多く含んでいる.従来の研究では,西山層と灰爪層の境界付近で見られるNo.2 Globorotalia inflata bedにより暖流の流入が示唆されている(米谷,1978;佐藤ほか,1987など).今回,西山層について放散虫を検討したところ,本層下部の群集ではSpongodiscus spp.,中部ではDictyocoryne truncatum,上部ではStylochlamydium venustumが多く産出することが明らかになった.これらのうち,D. truncatumは熱帯-亜熱帯の表層に生息する種で,暖流の流入を特徴づける種とされている(Motoyama et al., 2016).また,S. venustumは亜寒帯の表層に生息する種とされている(上栗・本山,2007).これらの生態的特徴およびそれぞれの種に随伴する熱帯-亜熱帯表層種,亜寒帯表層種の産出からは,熱帯-亜熱帯表層種が西山層の中部から産出し,上部で見られなくなるという局所的な消長を示す.これに対して亜寒帯表層種は,全試料において一定量産出がするが,中部のある層準で急激に増加するような変化が認められる.
これまで西山層で検討されてきた古地磁気層序および火山灰層中のジルコンのフィッション・トラック年代値やU–Pb年代値を参考に堆積速度曲線を作成し,各種の生層準の年代値を求めると,D. truncatumに代表される熱帯-亜熱帯表層種の出現は約1.7 Ma,亜寒帯表層種(S. venustum)の急増は約1.6 Ma,熱帯-亜熱帯表層種の消滅は約1.5 Maに起こったことが推定される.特に,現在の対馬海峡が約1.7 Maに形成されたことがKitamura and Kimoto (2006)やItaki (2016)により言及されており,本研究はそれらと矛盾のない結果となった.また,これまで本地域では西山層/灰爪層境界付近のNo.2 G. inflata bedにより暖流の流入が示唆されていたが,本研究により,さらに古い時期から暖流が流入していたことが明らかになった.
文献:Alexandrovich, J. M., 1992, Proc. Ocean Drill. Program, Sci. Results, 127/128, 291–307;Itaki, T., 2016, Prog. Earth Planet Sci., 3, DOI:10.1186/s40645-016-0087-4;上栗伸一・本山 功,2007,化石,no. 82,35–42;岸 清・宮脇理一郎,1996,地学雑,105,88–112;Kitamura, A. & Kimoto, K., 2006, Palaeogeogr. Palaeoclimatol. Palaeoecol., 236, 355–366;小林巖雄ほか,1993,出雲崎地域の地質,地質調査所,91p.;米谷盛寿郎,1978,池辺展生教授記念論文集,35–60;Matsuzaki, K. M. et al., 2018, Prog. Earth Planet Sci. 5, DOI:10.1186/s40645-018-0204-7;Motoyama, I. et al., 2016, Paleontol. Res., 20, 176–206;中世古幸次郎ほか,1972,石油技術協会誌,37,7–22;佐藤時幸ほか,1987,石油技術協会誌,52,11–22.;柳沢幸夫・天野和孝,2003,地質調査研究報告,54,63–93.
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