講演情報

[T3-O-14]石英の結晶方位定向配列の遷移過程:含水石英単結晶の変形実験からの考察

*横山 裕晃1,2、Wallis David3、武藤 潤2 (1. 広島大学、2. 東北大学、3. ケンブリッジ大学)
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【ハイライト講演】大陸地殻の流動を支配する石英は,変形とともに結晶の配列や強度を変化させる.本研究では,結晶軸に対して載荷方向を制御した独自の実験により,格子回転に伴ってすべり系が変化し,結晶方位定向配列が遷移する仕組みに迫る.大陸地殻の変形に伴うレオロジー変化の定量的解明に繋がることが期待される. ※ハイライト講演とは...

キーワード:

石英、レオロジー、結晶方位定向配列、すべり系、シュミット因子


 石英のレオロジーは、大陸地殻深部における流動変形を支配する重要な要素であり、結晶方位定向配列(CPO)は優勢すべり系や変形機構を反映するため、レオロジー特性を推定する有効な手がかりとなる。Tokle et al. (2019)は、石英の転位クリープとCPOの関係をレビューし、CPOから推定される優勢すべり系がbasal< a >の場合には応力指数が約2.7、prism< a >の場合には約4となることを示した。一方、石英の変形実験では、粒界移動型の動的再結晶機構が卓越する条件において、歪の増加に伴い優勢すべり系がbasal< a >からrhomb< a >、さらにprism< a >へと変化することが報告されている(Heilbronner et al., 2006; Muto et al., 2011)。したがって、CPO遷移過程を明らかにすることは、歪に伴うレオロジー変化を理解する上で鍵となる。特に、CPO遷移は比較的低歪の段階から進行すると考えられるため、低歪で変形した試料の解析が有効である。しかし、その微視的機構は明らかになっていない。そこで本研究では、含水石英単結晶の低歪変形実験結果に基づき、石英CPOの遷移過程をシュミット因子の観点から検討した。
 変形実験はGriggs型固体圧式変形試験機を用い、封圧1.5GPa、温度600-900°C、歪速度1×10-5 s-1の条件で含水石英単結晶の軸圧縮で行なった。実験には、basal< a >と prism[c]に対する分解剪断応力が高いO+(c軸およびa軸に対して45°)に圧縮する方位、および prism< a >に対する分解剪断応力が高いm+(c軸に垂直)に圧縮する方位の試料を用いた。応力-歪曲線は、O+で圧縮した試料は低い降伏強度を示す一方で、その後に歪硬化を示す。これに対し、m+で圧縮した試料は高い降伏強度を示すが、その後は定常状態となり、軸歪10〜20%で両者の強度関係が逆転した。本研究では、このうち700°Cで変形した試料(O+: 軸歪20%、m+: 軸歪30%)について、結晶方位とシュミット因子を解析した。
 O+で圧縮した試料では、basal< a >すべりによって剪断方向へ約13°の格子回転が生じた。この方位では、最大のシュミット因子は basal< a >で0.40であったが、prism< a >および rhomb< a >もそれぞれ0.37および0.36と近い値を示した。一方、m+で圧縮した試料では格子回転は小さく、最大のシュミット因子は prism< a >で0.47、結晶学的に等価な別のprism< a >で0.37、rhomb< a >で0.36であった。basal< a >のシュミット因子は0.17と低い値を示した。今回解析した試料の歪量は比較的小さいが、basal< a >すべりによる格子回転がさらに進行すると、basal< a >のシュミット因子は低下し、prism< a >のシュミット因子が増加すると考えられる。この過程は、歪の増加に伴うbasal< a >からprism< a >へのCPO遷移を説明しうる。実際に、剪断方向を変えた単結晶の実験から、粒界移動再結晶により生まれた粒子は、より prism< a >に近いrhomb< a >の方位を持つ(Muto et al., 2011)。一方、prism< a >すべりに適した方位では、一つのprism< a >のシュミット因子が低下しても、結晶学的に等価な別の prism< a >のシュミット因子が上昇するため、全体としてprism< a >の高いシュミット因子が維持されやすい。これらのことは、石英のCPO遷移が、すべりに伴う格子回転とシュミット因子の変化によって制御される可能性を示している。特に、basal< a >すべりによる格子回転はbasal< a >自身を不利な方位へ移行させる一方で、prism< a >slipを有利にする効果を持つ。したがって、シュミット因子解析は、石英のCPO遷移とそれに伴うレオロジー特性の変化を定量的に評価する有効な手法であり、今後、より高歪条件および多結晶体に適用することで、CPO遷移プロセスの解明につながると期待される。

引用文献
Tokle et al. (2019) EPSL (doi: 10.1016/j.epsl.2018.10.017)
Heilbronner and Tullis (2006) JGR (doi: 10.1029/2005JB004194)
Muto et al. (2011) JGR (doi: 10.1029/2010JB007891)

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