講演情報
[T3-O-15]石英の再結晶組織の定量化指標:EBSD画像のデータ処理条件が与える影響
*中小路 一真1、清水 以知子2、道林 克禎3 (1. 東京大学、2. 京都大学、3. 名古屋大学)
キーワード:
石英、再結晶組織、EBSD、画像解析、高温高圧変形実験
高温下で流動変形した岩石中にみられる石英の再結晶組織は、変形時の温度、歪速度、差応力などの条件を反映していると考えられる。Masuda and Fujimura (1981, Tectonophysics, 72, 105–128)は熊澤型変形試験機(Shimizu et al., 2026, Rev. Sci. Instrum., 97, 165103)を用いて細粒の石英岩(瑪瑙)を出発物質として、封圧0.4 GPaで高温高圧変形実験を行い、高温低歪速度条件では直線的な粒界と等方的な粒子からなるType-P組織、低温高歪速度条件では鋸歯状の粒界と扁平な粒子からなるType-S組織がみられることを報告した。同様に我々は、熊澤型試験機をもちいて、より高い封圧 (1.5 GPa) でも、Type-P/S遷移が起こることを確認した。さらに偏光顕微鏡像に基づく画像解析から、石英結晶粒子の平均アスペクト比が高温・低歪速度条件から低温・高歪速度条件にかけて系統的に増加し、Type-P/S境界がアスペクト比 R=2.3 に対応することが示しされた(中小路ほか, 2025, 地質学会)。この時、同様の系統性はEBSDマップを用いた画像解析によっても認められたが、周囲長をもとにしたペリメーターやフラクタル次元では、先行研究の光学顕微鏡解析 (Takahashi et al., 1998, JSG, 20, 269–275)や EBSD解析(Johnson et al., 2025, JGR, 130, e2024JB030866)で報告されていたような系統性はみられなかった。EBSD粒子形状解析では、ピクセル化低減と分解能・粒子数の両立のため、解析条件の選定が必要である。そこで本研究では、EBSD解析におけるステップサイズ、最小粒子面積、および粒界平滑化の影響を評価し、石英再結晶組織の形状指標、とくにアスペクト比が変形条件指標としてどの程度頑健に用いられるかを検討した。
実験回収試料の薄片はコロイダルシリカで仕上げ研磨し、タングステンフィラメント走査型電子顕微鏡 (HITACHI S-3400N Type II) を用いてEBSD測定を行った。測定領域は光学顕微鏡観察領域の近傍とし、各試料に対して1 µmと、0.25 または0.5 µm のステップサイズでのEBSD測定を行った。粒子解析にはMTEX(Bachmann et al., 2011, Ultramicroscopy, 111, 1720–1733)を用い、再構成した粒子に対して、アスペクト比 R、楕円で正規化した周囲長 PN 、および周囲長–面積関係に基づくフラクタル次元 D-value(Takahashi et al., 1998)を計算した。最小粒子面積を4–100 pixels、粒界平滑化の反復回数を0–20回の範囲で変化させ、各指標の解析条件依存性を調べた。
アスペクト比 R は、比較的粗粒の試料(平均粒径8 µm程度)ではステップサイズや最小粒子面積を変化させてもほとんど変化しなかった一方、細粒試料(平均粒径3 µm程度)ではステップサイズを小さくすると最大約10%増加し、最小粒子面積を大きくした場合にも増加傾向を示した。これは、細粒試料では高分解能測定により粒界がより詳細に認識されること、またcut-offにより除外される小粒子の割合が大きいことを反映していると考えられる。一方、粒界平滑化による R の変化は小さく、細粒試料でも約5%程度にとどまった。いずれの解析条件においても、 はType-P/S遷移に対応する系統性を保っていた。
正規化周囲長 PN も粗粒試料より細粒試料で解析条件の影響を強く受けたが、特に粒界平滑化の影響が大きかった。平滑化なしの場合と20回平滑化した場合を比較すると、 粗粒試料で約15%、細粒試料でで約30%低下した。これは、 PN が粒界の微細な凹凸やEBSDデータのピクセル化を強く反映するためと考えられる。また、D-valueは最小粒子面積が大きくなるほど値が大きくなった。
以上より、EBSDに基づく粒子形状解析では、粗粒の組織は解析条件に対して比較的安定である一方、平均粒径が数 µm程度の細粒の組織では、解析条件の影響を受けやすいことが分かった。比較的粗粒の石英岩の実験試料を解析した Johnson et al. (2025) では, D-value が有効な指標として提案されたが、初期粒子が残存しない定常組織に近い石英組織には使えないことを今回の結果は示している。一方で、アスペクト比 R は、解析条件を変えても高温・低歪速度条件から低温・高歪速度条件にかけて増加する傾向を保った。したがって、 Rの絶対値は解析条件に依存するものの、Type-P/S組織遷移や変形条件を反映する相対的指標としては比較的頑健であると考えられる。
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