講演情報

[T3-O-17]流体が関与する断層面のすべり挙動

*土屋 範芳1、平野 伸夫2、末吉 和公2 (1. 八戸工業高等専門学校、2. 東北大学)
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キーワード:

断層破壊、すべり挙動、フラッシング、熱応力、流体

 断層面(き裂面)の力学的破壊様式は,引張,せん断応力の組み合わせからMode I, II, IIIに区分されるが,断層面(き裂面)に作用する流体が,加圧的に作用するのか,減圧現象をともなうのかなどの流体の相変化によって,断層面(き裂面)の形状が異なってきて,同じ応力場においても,断層の破壊現象やすべり挙動に変化が生じる.岩石と流体が力学的に平衡状態にある場合,いわゆるlithostaticな環境であれば,破壊に及ぼす流体の関与は,接触面での摩擦係数の低減などが予測される.もし加圧環境であれば,異常間隙圧などに誘引されて,すべりが生じるであろう.すべりが生じることにより,間隙水圧の上昇と低下が繰り返されることになる.一方,断層すべり時の空間形成,たとえばpull apart basin様の空間が生じると,その空間は一時的には真空もしくは真空にかなり近い環境となり(Weatherley & Henley, 2013),断層面に存在する流体はこの空間にフラッシングすることが考えられる.フラッシング,換言すれば沸騰現象は,潜熱を断層面表面から奪い,断層表面は冷却される.一定の地温下において,断層面が冷却されると,断層面には,熱応力き裂が発生すると予測される.本発表では,流体のフラッシングにともなう,岩石の冷却現象とそれによる熱応力割れの基礎的実験結果(Sueyoshi et al., 2025)ならびに流体相変化にともなう破砕が岩⽯の基礎的な⼒学的特性およびすべり特性に与える影響を明らかにする室内すべり実験結果について報告する.基礎的実験では,径1cm高さ6cm程度の円柱,直方体および球体の花崗岩試料を,オートクレーブにより320-370℃で流体に飽和した環境から,一気に減圧し,岩石の温度変化を実測し,その結果をもとに温度変化によって生じる熱応力を数値シミュレーションで明らかにした.またすべり特性の実験では,直径30 mm, ⾼さ 40 mmの 円柱状に 整形した 花崗岩試料を軸⽅向に 対して45度の 傾斜を 持つプレカットを導⼊することで断層を模擬した.300 ℃から減圧沸騰させ,その後で三軸試験機を⽤いてせん断すべり実験を実施した.実験条件は、温度150 ℃ ,軸圧55 MPa, 封圧30 MPaとし,封圧を段階的に減少させることで差応⼒を増加させた.また,実験中は軸変位,アコースティック‧エミッション(AE)も 同時に 測定した.対照実験として,減圧沸騰せず自然冷却した試料についても同様なすべり実験を行い,両者を比較した.その結果,自然冷却試料の場合には,大きなAE発生をともなう急激なすべり挙動が観察されるのに対し,減圧沸騰した試料では,連続的な遅いすべりが生じ,摩擦係数も大きく減じることがわかった.これらの結果は,流体が関与する断層面には,流体の相変化に起因する微細な熱応力割れとガウジの形成が促進されて断層面の弱化が生じ,その結果,連続的に,‘ずるずる’すべる遅い安定的なすべり挙動となる.‘ずるずる’すべりによって差応力はほとんど減少しないため,最終的に破壊的なすべり挙動に転換する可能性がある.

Weatherley, D.K. and Henley, W. (2013), Flash vaporization during earthquakes evidenced by gold deposits. Nature Geoscience, 6, 294–298. https://doi.org/10.1038/ngeo1759

Sueyoshi, K., Aoshima, S., Takagi, K., Mizuno, K., Hirano, N., Tsuchiya, N. (2025). Vulnerability of Mechanical Properties of Rocks Generated by Rapid Decompression Fracturing Under Hydrothermal Conditions. Rock Mechanics and Rock Engineering, 58. 8477–8489, https://doi.org/10.1007/s00603-025-04468-x

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