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[T3-O-20]粘土鉱物の低い摩擦強度についての考察

*奥田 花也1、高橋 美紀2 (1. 海洋研究開発機構 高知コア研究所、2. 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)
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キーワード:

摩擦強度、粘土鉱物


 これまでの室内摩擦実験より、他のケイ酸塩鉱物に比べ、粘土鉱物は低い摩擦強度を持つことが知られている。沈み込み帯のプレート境界断層において、粘土鉱物は広く存在しており、その特異な力学的特性が断層のすべり挙動や地震発生サイクルに重要な役割を果たすことが指摘されている。しかしながら、先行研究の多くはμm/s以上のすべり速度域での摩擦強度の測定に基づいており、断層が地震間の応力蓄積期に経験するような、nm/sオーダーの超低速の載荷速度条件下における粘土鉱物の摩擦特性については、依然として未解明な点が多い。

粘土鉱物は一般に摩擦強度の回復率(ヒーリングレート)が低いことが知られる。従来のSlide-Hold-Slide(SHS)テストにおける「hold」中の断層では、すべり速度が常に減速しながら応力緩和が進行する。すなわち、このような減速を伴う応力緩和では、垂直荷重による圧密プロセスがあっても、粘土鉱物の摩擦強度は低いままであろう。しかし、我々が予察的に実施した実験により、超低速載荷時の粘土鉱物の強度は従来考えられていた強度より相応に高いことが示唆されている。三軸プレカット構成にイライトや緑泥石などの粘土鉱物からなる断層ガウジを挟み、含水条件、温度100〜200℃、軸載荷速度を0.1 μm/sから10 nm/sに落としたところ、測定されたせん断応力は速度ステップに伴う直接効果によって緩和したのち変位とともに上昇し、かつμm/sオーダーでの粘土鉱物の摩擦強度よりも高いせん断応力まで増加しつづけた。三軸プレカット構成でのガウジ試料は、純粋なせん断変形に加え圧密変形も被っていると考えられる。軸載荷速度10 nm/sでの極端な硬化は、ガウジ層のせん断剛性に起因する弾性変形と、圧密によるせん断剛性率の増加の両方の効果の可能性がある。いずれにせよ、この極端な硬化によって得られうる強度は、従来考えられていた粘土鉱物の摩擦強度より高い。つまり、超低速載荷時の粘土鉱物の摩擦強度はμm/sオーダーの軸載荷速度で測定されたせん断応力から求まる「従来の強度」より相応に高いことを示唆する。

前述の通り、SHSテストの結果からは、応力緩和と圧密の組み合わせだけでは粘土鉱物の摩擦強度は上昇しないと考えられる。また、μm/sオーダーのすべり速度では粘土鉱物の摩擦強度は低い。すなわち、超低速の載荷条件にさらされている場合にのみ、粘土鉱物の摩擦強度が大きくなる可能性がある。もし粘土鉱物が超低速載荷時に高い摩擦強度を持つのであれば、粘土鉱物に富む断層は、地震間の超低速載荷時には高い応力を蓄積するポテンシャルをもち、地震の開始時には高い応力降下をもたらすかもしれない。今後は、さらに含水・高温条件における超低速すべり実験を重ねて摩擦強度を精緻に測定するとともに、その背景にある物理化学プロセスの特定を進め、断層挙動や地震発生サイクルへの影響について詳細に解明していく予定である。

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