講演情報
[T3-O-22]深部沈み込み帯断層帯における岩石流体反応と断層弱化:関東山地三波川帯の例★2026年度学生優秀発表賞受賞★
*福田 成1、吉田 一貴2、Dandar Otgonbayar1、大柳 良介1,3、岡本 敦1 (1. 東北大学、2. 高エネルギー加速器研究機構、3. 海洋研究開発機構)
キーワード:
岩石ー流体相互作用、断層岩、三波川変成帯、元素移動
プレート沈み込み境界では,通常の地震が発生する温度領域よりも深部において,長期スロースリップイベントや深部低周波微動といったスロー地震が観測されている.これらの深部スロー地震に対応する地質学的現象として,石英脈の形成や交代作用など沈み込み帯の岩石流体相互作用が力学的不均質性や流体圧に重要な影響を及ぼす可能性が指摘されてきた (Muñoz-Montecinos and Behr, 2023, Geophys. Res. Lett.; Tarling et al., 2019, Nat. Geosci.).しかし,沈み込み帯において進行する岩石流体反応が断層の滑り挙動にどのように関与しているかについては,地質学的に検証された例は少ない.三波川帯は典型的な高圧変成帯であり,西南日本に類似した暖かい沈み込み帯の温度構造での変成作用を記録する.本研究では三波川変成帯関東山地長瀞地域における著しく岩石流体反応の影響を受けた断層の岩石学的特徴と変形組織について報告する.対象とする断層岩は,関東山地長瀞地域の高砂橋周辺に産出する.ここは,主に曹長石斑状変晶の有無で特徴付けられるZone I とZone IIの境界に位置し,発達する断層を境界に石墨化度のギャップがあることが報告されている(田切ら, 2003, 岩鉱). 露頭は主に泥質片岩と塩基性片岩から構成され,断層帯では大きく角礫化している.また,炭酸塩脈の発達した数メートルサイズの蛇紋岩ブロックも確認された.泥質片岩の炭質物のラマン分光分析の結果,382-444℃の最高履歴温度のギャップが確認され,この温度領域は深部スロー地震発生帯とおおよそ一致する(Yoshioka and Murakami, 2007, Geophys. J. Int.).断層破砕帯は主に石英・曹長石・フェンジャイト・緑泥石で構成される泥質片岩において発達しており,断層コアと,特徴的な黒色から緑色を示す断層角礫から構成され,3つの特徴的な岩石流体反応が観察された.1つ目は,曹長石からカリ長石への反応であり,破砕した曹長石斑状変晶の亀裂をカリ長石が充填する様子が観察された.2つ目は,緑泥石生成である.元々の泥質片岩にも緑泥石(XMg = 0.35-0.45)は存在しているが,フェンジャイトを置換しながらMgに富む緑泥石(XMg = 0.45-0.55)が断層帯に特徴的に存在する.3つ目は,方解石の析出であり,断層角礫の間を埋める鉱物脈として存在している.これらの反応は断層角礫よりも断層コアにおいてとりわけ顕著であり,変形の集中する部分ほど反応の進行度も高いという明瞭な空間的対応が認められた.破砕した断層コアは方解石・カリ長石・石英・緑泥石で構成され,透過電子顕微鏡で観察すると大部分がカリ長石の細粒粒子であると確認された.また全岩化学組成分析の結果,破砕した断層角礫はMgおよびFeに富むことが分かり,これは外部からのマグネシウムに富む流体の流入を示唆している.以上の観察・分析結果に基づき,深部スロー地震発生帯からより浅部の温度条件に至る沈み込み帯断層帯において,外部流体の流入を伴う岩石流体反応が進行し,断層コアに向かうほど反応が進行して緑泥石やカリ長石が生成したことを示している.断層コアに特徴的な超細粒粒子の存在は,変形集中と反応進行の寄与が考えられるが,いずれの場合も岩石流体反応が断層強度を低下させ,破砕を伴う断層すべりを促進した可能性が示唆される.
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