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[T3-O-23]オリビンおよび花崗岩の模擬断層ガウジ試料を用いた熱水条件下における地震時の高速断層すべり挙動の実験的解明

*日高 美空1,2、鈴木 孝弘3、岡崎 啓史1,2、奥田 花也2、廣瀬 丈洋2,1 (1. 広島大学、2. 海洋研究開発機構高知コア研究所、3. マリン・ワーク・ジャパン)
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キーワード:

地震、高速摩擦、熱水条件、動的弱化


 アウターライズ断層やトランスフォーム断層では、海洋マントル内でも地震が発生している。そのため、マントルかんらん岩の地震時の断層すべり挙動を理解することは、地震発生過程を解明する上で重要である。また、地震波観測などから、これらの断層には水がマントル内部まで浸透していることが示唆されている。一方、内陸地震は主に大陸地殻内で発生することから、花崗岩の地震時の断層すべり挙動の理解も重要である。天然の震源環境は熱水条件下であり、断層運動に伴って断層ガウジが形成される。しかし、これまでの先行研究における高速摩擦実験の多くは、dry・室温条件やrock-to-rock試料を用いた実験に限られており、天然の震源環境を十分には再現していなかった。本研究では、JAMSTEC高知コア研究所に設置された回転式熱水剪断試験装置 (HDR) を用い、天然の震源環境に近い条件下における地震時の断層すべり挙動を解明することを目的として高速摩擦実験を実施した。新たな技術開発により、超臨界状態を含む熱水条件下において、模擬断層ガウジ試料を用いた高速摩擦実験に成功した。
実験には、マントルを模擬したサンカルロスオリビンおよび大陸地殻を模擬した稲田花崗岩のガウジ試料を用いた。これまでに、すべり速度:1.1, 2.2 m/s、すべり量:3.3, 6.6 m、間隙水圧:50, 100 MPa、有効垂直応力:2.5 – 10 MPa、温度:20 – 400oCの条件で、合計43回の高速摩擦実験を実施した。なお、間隙水圧50, 100 MPa、温度400oCの条件下では、水は超臨界状態である。
実験の結果、オリビンおよび花崗岩のいずれにおいても、高速摩擦実験中に試料強度が劇的に減少する動的弱化が認められた。オリビンでは、摩擦係数が約0.8から約0.5まで減少した。一方、花崗岩では、加速時に摩擦係数が約0.7から約1.0まで増加した後、約0.4まで減少し、オリビンとは異なる力学挙動を示した。回収試料の微細組織観察では、オリビンは出発試料の粒径100 – 500 µmから約100 nmまで著しく細粒化していた。それに対し、花崗岩では摩擦溶融に伴うメルト組織が形成されていた。
先行研究の高速摩擦実験の力学データをコンパイルしたDi Toro et al., 2011では、多くの実験で摩擦係数が0.1 – 0.3まで減少する顕著な動的弱化が報告されている。これらの実験は主にdry・室温条件下でrock-to-rock試料を用いて実施されている。それに対し、本研究では熱水条件下でガウジ試料を用いた高速摩擦実験を行った結果、動的弱化が生じても摩擦係数は0.4 – 0.5程度までしか減少しなかった。以上より、天然の震源環境に近い条件下では、従来の高速摩擦実験で示されたほど強い動的弱化は生じにくい可能性が示唆される。さらに、オリビンにおける動的弱化メカニズムを流動則に基づいて検討した。オリビンの粒界すべり、転位クリープ、拡散クリープ、パイエルス機構の4つの流動則 (Hansen et al., 2011, Hirth and Kohlstedt, 2003, Katayama and Karato, 2008) に、本研究の高速摩擦実験で得られたひずみ速度103 s-1および粒径0.1 µmを適用して流動応力を見積もった。その結果、低温域ではパイエルス機構がアスペリティでの塑性変形を支配する一方、約930oC以上では拡散クリープが卓越し、流動応力が急激に低下することが示された。したがって、オリビンの実験では、摩擦発熱による温度上昇に伴って拡散クリープが卓越し、流動応力の低下を通じて動的弱化が起きた可能性が示唆される。それに対し、花崗岩の実験では、超塑性が起きる前に、摩擦発熱によって水圧50 MPa条件下での融点約800oC (Stern and Wyllie, 1973) に達し、メルト層の形成に伴う粘性率の低下によって動的弱化が生じたと考えられる。今後は、オリビンにおける拡散クリープの卓越と花崗岩における摩擦溶融という動的弱化のメカニズムの違いが、ラプチャーダイナミクスに与える影響について議論を進める予定である。

Di Toro et al., 2011, Nature, 471.7339: 494-498.
Hansen et al., 2011, Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 116.B8.
Hirth and Kohlstedt, 2003, Geophysical monograph series, 138: 83-105.
Katayama and Karato, 2008, Physics of the Earth and Planetary Interiors, 168.3-4: 125-133.
Stern and Wyllie, 1973, Earth and Planetary Science Letters, 18.1: 163-167.

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