講演情報

[T1-O-2]西南日本の鮮新世ー完新世テクトニクス再考と「斉一主義」の時空スケール

*木村 学1 (1. 海洋研究開発機構)
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キーワード:

西南日本、南海トラフ、テクトニクス、斉一主義、古銭洲海嶺

 「斉一主義」(uniformitarianism) とは、「現在観察される自然法則・過程を用いて過去を解釈する」ことであり、「現在は過去を知る鍵であり、過去は未来を知る指針である」という地質学や歴史学を貫く「哲学」(philosophy)である。

 地球のテクトニクス研究における「斉一主義」は、主に固体地球のプレート境界過程などに関わる一般法則が、全地球空間、全地球史を通じて成立することを前提とする。 沈み込みプレート境界での地震・火山・地殻変動・造山運動過程などを対象とする場合、それらの一般的素過程、それを描き出す最適地域が選ばれる。それらの、ナノからメガ・ギガスケールの時空間を通してのシームレスな一般法則解明をめざして精力的に研究が進められている。

 以上の視点から見た時、フィリピン海プレートが南海トラフから沈み込む、西南日本島弧海溝系は、地震や地殻変動の連続稠密観測、地形地質学的・考古歴史学的な変動記録、掘削を含めた精密地下構造探査、地球化学的特徴とテクトニクスとの関連などにおいて地球上で最も調査研究されている対象であり、そこから得られる科学的知見は常に地球の沈み込み帯研究をリードする位置にある。特に21世紀になってからの研究の飛躍は著しい。

 頻繁に繰り返す地震活動観測と早期警戒警報システムの発動は、ややもすると長期・大空間スケールの変動を忘れがちにさせるが、万〜数百万年、数千キロに及ぶ地形地質学的な時空スケールまで、「斉一主義的」に均質な精度でシームレスに変動を描き出すことは、正確な過去事象の理解、「抜け」のない未来予測のためにも欠かせない。

 添付した図に、特に最近の鮮新・更新・完新世における、西南日本各所の特徴的現象について記した。更新世開始前後に顕著となり、現在へ続くこれらの諸現象が沈み込み帯でのプレート境界過程とどのような関係を持つのか、議論が多い。

 本講演では、最近飛躍的前進を遂げた海洋前弧域の3次元地下構造研究を基にして進行中のテクトニクスについて論じたい。本講演で示す現在進行中のテクトニクス像は、過去の沈み込み帯テクトニクスを議論する際に、斉一主義の立場から要求される時空間スケールと、その解釈に必要な精度を考えるうえで重要な指針となるだろう。

図の説明
西南日本におけるテクトニクス諸現象の時空間分布. 文献:図. アジアの活変動帯(木村学・山口飛鳥著)東大出版会(2025)に修正・加筆:出版以降の文献:Abe et al. (2025), 地質学雑誌, 131,1; Kimura et al. (2026) Coms. E. & E. ; Kawano et al., JpGU 2026 abstract.

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