講演情報
[T1-O-9]乾燥砂で作るウェッジの長期成長過程で見られる変形様式と荷重応答の変化★2026年度学生優秀発表賞受賞★
*小田 和佳1、藤内 智士1、高下 裕章2、橘 隆海1 (1. 高知大学、2. 産業技術総合研究所)
キーワード:
砂箱実験、付加ウェッジ、スティックスリップ、沈み込み帯
本研究では,沈み込み帯で形成される付加体について,その成長に伴う力学的応答および変形様式の変化を明らかにすることを目的として,乾燥砂を用いたアナログモデル実験を実施した.
これまで我々が行ってきた乾燥砂を用いた沈み込み帯のウェッジを再現する室内実験では,フロンタルスラスト(Frontal Thrust: FT)の形成と同期した荷重サイクルが認められる一方で,装置の大きさに依存して変位量に限界があった.一方,南海トラフに代表される天然の付加ウェッジは,長期にわたる変形の結果として形成されたものである.そのため,天然の付加ウェッジで起こる変形現象をより厳密に理解するには,室内実験で作るウェッジについてより長期間における変形パターンの評価が重要である.そこで本研究では,大型の砂箱装置で実験を行うことで長期間の変形かつ詳細な応力応答を観察した.
実験は,産業技術総合研究所にある大型の砂箱実験装置(長さ約1900 mm,幅300 mm)を用いて,厚さ50 mmの乾燥砂層を水平に速度約0.15 mm/secで約1100 mm変位させることで,大きな上載荷重条件下での長期間変形を起こした.実験中の荷重計測には,底面に5つおよびバックストップに3つ,合計8個設置したロードセルを用いた.また,砂層の変形評価には,デジタル画像相関法(Digital Image correlation; DIC)を使って,側方から5秒間隔で連続撮影した画像について砂体内部の変位場を定量化し,ひずみ場を算出した.これらの定量化・可視化には,西華デジタルイメージ株式会社のソフトウェアsDIC を用いた.そして,荷重と変形のデータを比べることで,ウェッジの成長に伴う変形パターンの変化を調べた.
実験の序盤にあたる変位量30–390 mmでは,先行研究でも報告したFTの形成に対応する荷重のサイクルが3回認められた.その後ウェッジが成長して変位量 390–1020 mmの範囲では,FT形成とは関係しない別の荷重の増減が目立つようになった.さらに変形が進行して変位量 1020–1110 mmの範囲では,荷重の急激な低下が断続的に現れはじめ,このとき装置全体からは破裂するような音が出ると同時に装置全体が振動した.以上の結果は,ウェッジ成長で起こる変形パターンが期間とともに変わっていったことを示している.
特に実験の後半の音を伴う急激な荷重低下は,実験序盤の緩やかな荷重低下とは様相が異なる.現時点では,変形との対応やその力学的要因については断定できないが,応力のグラフからスティックスリップと対応する可能性があり,天然の付加ウェッジで発生する地震現象との比較という点から詳しく調べる価値があると考えている.今後は,砂層の局所域に絞ったDIC解析や摩擦試験データとの比較を通じて,上載荷重条件に注目して研究を進めていく予定である.これにより,長大変形した付加ウェッジが示す応力応答に迫ることが期待される.
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