日本畜産学会第132回大会

公開シンポジウム「日本の畜産研究は、世界に冠たる和牛生産をいかに実現したのか」

9月18日(水)16:15~19:15(第Ⅰ会場)

 

育種改良における遺伝的評価の進歩-外貌審査、BLUP法、ゲノミック評価

祝前 博明(京都大学名誉教授、新潟大学佐渡自然共生科学センターフェロー)

 

和牛の改良を支えた生殖技術の展開

武田 久美子(農研機構上級研究員)

 

和牛の肉質を向上させたビタミンAコントロール技術-これまでの研究と今後の展開-

岡 章生(微生物化学研究所シニアテクニカルアドバイザー)

 

和牛肉のおいしさと食味性

入江 正和(家畜改良センター理事長)

 

世話人・座長:廣岡 博之(京都大学名誉教授)  


和牛(黒毛和種牛、褐毛和種牛、日本短角種牛、無角和種牛の総称)は、近年、世界的に注目され、特に黒毛和種牛は世界に他に類を見ない霜降り肉生産能力を有し、またおいしさに関係するオレイン酸含有割合が高いことが知られている。今後のわが国の農業を考えるうえで、この比類なき霜降り肉生産能力を有する黒毛和種牛は「日本の宝」と呼ぶにふさわしいものである。このような黒毛和種牛の好ましい特性は、和牛の先祖である在来和種牛が潜在的に有していた能力であるが、それを引き出したのは多くの研究者や和牛関係者、生産者のたゆまぬ努力と研究成果の蓄積の結果である。しかしながら、1970年代に流出した黒毛和種牛等の子孫による Wagyu生産が、近年、米国、オーストラリアさらに最近ではヨーロッパ、アジアの国々でも行われ、すでに海外産の和牛肉に関する世界戦略が展開されている。このような国際状況において、わが国固有の和牛を保護し、国内産の和牛肉の輸出を拡大して、さらには世界の貿易戦争の中で勝利するためには、既存の成果を礎としつつ、和牛についてそのルーツと品種特性をこれまでにない視点から科学的に明らかにし、その遺伝的能力を最大限に活用する生産の場を確立することが喫緊の課題である。そこで、本シンポジウムでは黒毛和種の品種特性の解明と遺伝的能力評価の軌跡、和牛の改良を支えた最先端繁殖技術、ビタミン Aコントロールによる霜降り牛肉生産、和牛肉のおいしさに関する研究成果など、比類なき牛肉生産を実現してきたわが国の研究成果について多くの方々と情報と知識を共有し、次世代の和牛研究と和牛生産の将来展望について議論する。なお、本シンポジウムは伊藤記念財団の助成を受けて行われる。