講演情報
[11-1040-1add]腎臓リハビリテーションにおける理学療法士の役割と期待
松永 篤彦 (北里大学 医療衛生学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 教授
日本腎臓リハビリテーション学会 副理事長
日本心臓リハビリテーション学会 理事)
日本腎臓リハビリテーション学会 副理事長
日本心臓リハビリテーション学会 理事)

<ご略歴>
1983年:千葉労災病院
1985年:多摩丘陵病院
1989年:東海大学医学部付属大磯病院
1996年:北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科
2005年:北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科 教授
:北里大学大学院医療研究科 教授
1983年:千葉労災病院
1985年:多摩丘陵病院
1989年:東海大学医学部付属大磯病院
1996年:北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科
2005年:北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科 教授
:北里大学大学院医療研究科 教授
慢性腎臓病(CKD)患者に対する腎臓リハビリテーションの指針は、腎代替療法導入の前後で大きく異なるが、Zelle DMら(Nat Rev Nephrol, 2017)は、保存期CKD患者、透析患者および腎移植後患者の予後悪化因子のうち、最も上流に位置するのは加齢であり、次いで共通して重要な因子はphysical inactivity(身体不活動)であると指摘している。
透析患者に焦点を当てると、身体不活動は原疾患あるいは合併症である糖尿病、高血圧、脂質異常症などのリスクを高めるとともに、心血管死や入院イベントの発症リスクを増加させる。一方で、身体不活動は運動耐容能、筋肉量、身体機能の低下をもたらし、フレイルやQOLの低下を介して生命予後を悪化させる関連性が示されている。
すなわち、腎疾患患者の疾病管理(治療)の主要なターゲットは身体不活動であり、身体機能の定期的評価を基盤とし、日常生活における身体活動を維持・促進するための包括的介入が求められている。
本邦においても、2022年4月の診療報酬改定により「透析時運動指導加算」が新設され、腎臓リハビリテーションの制度的基盤が整えられつつある。また、日本腎臓リハビリテーション学会からは「腎臓リハビリテーションガイドライン第2版」がまもなく発刊される予定であり、そこでは透析患者のみならず、保存期CKD患者に対する運動療法の実施も提案されている。しかし一方で、透析患者に対する運動プログラム(処方)の有効性を検証した前向き研究やランダム化比較試験など、エビデンスレベルの高い報告はいまだ十分とはいえない。また、運動機能の改善が、治療ターゲットである身体不活動の是正、すなわち日常の身体活動量の増加に結びつくかについては、今後の検討課題である。
本教育講演では、演者らが約20年にわたり継続してきた血液透析患者に対する腎臓リハビリテーションの実際とその効果を紹介するとともに、理学療法士が直面する課題についても言及する。また、演者が現在、日本腎臓リハビリテーション学会副理事長として取り組む立場から、理学療法士に期待される役割と今後の展望についても触れたい。
本講演が、河野健一大会長の掲げるテーマ「確固たるダイアベティス理学療法学〜代謝内分泌・腎・足病における身体活動のあり方を問う〜」を考える一助となれば幸いである。
透析患者に焦点を当てると、身体不活動は原疾患あるいは合併症である糖尿病、高血圧、脂質異常症などのリスクを高めるとともに、心血管死や入院イベントの発症リスクを増加させる。一方で、身体不活動は運動耐容能、筋肉量、身体機能の低下をもたらし、フレイルやQOLの低下を介して生命予後を悪化させる関連性が示されている。
すなわち、腎疾患患者の疾病管理(治療)の主要なターゲットは身体不活動であり、身体機能の定期的評価を基盤とし、日常生活における身体活動を維持・促進するための包括的介入が求められている。
本邦においても、2022年4月の診療報酬改定により「透析時運動指導加算」が新設され、腎臓リハビリテーションの制度的基盤が整えられつつある。また、日本腎臓リハビリテーション学会からは「腎臓リハビリテーションガイドライン第2版」がまもなく発刊される予定であり、そこでは透析患者のみならず、保存期CKD患者に対する運動療法の実施も提案されている。しかし一方で、透析患者に対する運動プログラム(処方)の有効性を検証した前向き研究やランダム化比較試験など、エビデンスレベルの高い報告はいまだ十分とはいえない。また、運動機能の改善が、治療ターゲットである身体不活動の是正、すなわち日常の身体活動量の増加に結びつくかについては、今後の検討課題である。
本教育講演では、演者らが約20年にわたり継続してきた血液透析患者に対する腎臓リハビリテーションの実際とその効果を紹介するとともに、理学療法士が直面する課題についても言及する。また、演者が現在、日本腎臓リハビリテーション学会副理事長として取り組む立場から、理学療法士に期待される役割と今後の展望についても触れたい。
本講演が、河野健一大会長の掲げるテーマ「確固たるダイアベティス理学療法学〜代謝内分泌・腎・足病における身体活動のあり方を問う〜」を考える一助となれば幸いである。
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