講演情報

[S-4]糖尿病性末梢神経障害の有無における筋発揮率の特徴

*東根 風志1、小田 翔太1、細田 里南1 (1. 高知大学医学部附属病院リハビリテーション部)
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キーワード:

筋発揮率、糖尿病性末梢神経障害

【はじめに、目的】
筋発揮率(Rate of torque development; RTD)は、等尺性筋力測定時に得られる筋力-時間曲線の平均勾配を求めることで算出可能な指標である。特に筋力発揮から100ms以内の短期間のRTDはEarly RTDと言われ、筋発揮時の神経性因子を反映していると報告されている。そこで糖尿病性末梢神経障害(Diabetic peripheral neuropathy; DPN)患者では、末梢神経障害によりEarly RTDが低値を示すと仮説を立てた。本研究の目的は、DPNを有無によるEarly RTDを比較検証することである。
【方法、あるいは症例】
対象は糖尿病教育入院目的に入院した2型糖尿病患者100例 (年齢65[49-80]歳、男性56例)である。DPNは糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準を用いて群分けを行った。対象となった2型糖尿病患者のうちDPN無群は57例であった。評価項目は等尺性膝伸展筋力の体重比とRTDである。RTDの解析には過去の報告を参考に、最大筋力の20%を超えた時点を基準(0sec)に0-100msまでの区間をEarly RTDと設定した。統計解析には、X²検定、Mann-Whitney のU検定を用いて検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
男性の割合は(DPN無群/DPN有群)54.4/58.1%と有意差を認めなかった(P=0.708)。膝伸展筋力の体重比 4.1±0.1/3.5±1.5N/kgと有意差を認めなかった(P=0.062)。 一方、Early RTD 135.4±95.7/96.3±81.9N·m/sと有意な差を認めた(P=0.027)。
【結論】
DPNの有無は筋力と有意な差を認めなかったが、Early RTDではDPN有群で有意に低値を示した。DPNは高血糖に伴う酸化ストレスを主因とした神経変性により生じるとされるため、Early RTDが低値を示した可能性がある。Early RTDのような筋力発揮時の神経性因子を含めた筋力評価は有用な可能性がある。本研究の限界として、DPNの有無を簡易診断基準に基づいて群分けを行っており、無症候性のDPNを検出できていない可能性がある。今後は、神経伝導速度検査の測定結果を用いて群分けを行い検討していく必要があると考えられた。

倫理的配慮:
ヘルシンキ宣言に基づき、発表に際し対象者には十分な説明を行い、口頭および書面にて同意を得た。

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