講演情報

[O-2-1]糖尿病進行過程における爪郭部毛細血管形態変化と骨格筋障害の時系列的関連

*金指 美帆1,2、田中 雅侑3、丸尾 明史2,4、森山 由希乃1、津森 登志子5 (1. 県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 理学療法学コース、2. 県立広島大学 保健福祉学専攻 運動行動障害学領域、3. 岡山医療専門職大学、4. 医療法人仁聖会 小畑醫院、5. 県立広島大学)
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キーワード:

糖尿病、骨格筋、爪郭部毛細血管

【はじめに、目的】糖尿病では網膜症や腎症などの合併症の背景に微小血管障害が関与し、早期発見が重要である。爪郭部毛細血管(NFC)は非侵襲的かつ高再現性で体表から観察可能な微小血管であり、糖尿病に伴う形態変化や網膜症との関連が報告されている。近年、骨格筋毛細血管の退行が筋線維化や萎縮を引き起こすことが指摘されているが、糖尿病におけるNFC形態変化と筋毛細血管退行や筋形態変化との時系列的関係は不明である。本研究は、糖尿病進行過程におけるNFC形態変化が筋毛細血管退行と関連し、さらに筋線維化や萎縮に先行して生じるかを明らかにすることを目的とした。
【方法】雄性SDラットと非肥満型2型糖尿病モデルであるSDTラットを用い、12、18、28週齢の時点で評価・試料採取を行った。右後肢第3趾のNFCを毛細血管顕微鏡で観察・撮影し、血管径を計測した。足底筋(PL)およびヒラメ筋(SOL)を採取し、各筋の横断切片からアルカリフォスファターゼ染色で毛細血管数/筋線維数比(C/F比)、HE染色で筋線維横断面積、ピクロシリウスレッド染色でコラーゲン沈着量(面積率)を測定した。耐糖能は経口ブドウ糖負荷試験で評価し、空腹時血糖値を測定した。統計解析は、群間比較には t 検定を、群内経時比較には一元配置分散分析後、Tukey–Kramer 法による多重比較を行い、有意水準を5%とした。
【結果】12週齢では、SDT群に耐糖能異常や高血糖はみられず、NFC径、骨格筋C/F比、筋線維横断面積、コラーゲン沈着量に有意差はなかった。18週齢では、SDT群で耐糖能異常が出現し、NFC径の狭小化とPLのC/F比低下、さらに細胞間コラーゲン沈着量の有意な増加がみられた。この時点では空腹時血糖値の上昇や筋萎縮は認められなかった。28週齢では、SDT群で空腹時血糖値が上昇し、NFC径とPLのC/F比低下がさらに進行、コラーゲン沈着量も増加した。加えてPLの筋重量および筋線維横断面積が有意に減少した。一方、SOLではいずれの時点においても、各評価指標に糖尿病による有意な変化は確認されなかった。
【結論】筋毛細血管退行は筋萎縮に先行して筋線維化を伴って発生し、この変化はNFC形態異常の増加と同時期に生じた。NFC形態変化は、糖尿病における筋線維化や筋萎縮の進行を早期に予測し得る有用な非侵襲的指標となる可能性が示唆された。

倫理的配慮:
本研究は県立広島大学動物実験委員会の承認を得て実施した(承認番号:22A-0004)。

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