講演情報
[P-2-4]糖尿病患者におけるVirtual Reality環境下でのリーチ誤差改善とバランス機能への影響:ABAシングルケースデザイン
*佐々木 翼1、北野 雅之2、我妻 朋美3、野村 恵4 (1. 社会医療法人 鳩仁会 札幌中央病院、2. 山室クリニック、3. 佛教大学 保健医療技術学部 作業療法学科、4. 訪問看護ステーション ホームナース陽なた)
キーワード:
Virtual Reality、姿勢制御、バランス評価
【はじめに】
糖尿病(DM)患者は姿勢制御において視覚依存が強く転倒リスクが高い。しかし従来のバランス評価は安全性や簡便性に課題がある。Virtual Reality(VR)は視覚情報を制限し姿勢制御を安全に評価できるがDM患者に限定した報告は少ない。本研究の目的は、VRリハビリテーション(VRリハ)により定量化される「リーチ誤差」の変化を明らかにし、その改善がバランス・歩行機能と関連するかを検証することである。
【方法】
対象は90歳代女性DM患者1名(DM性末梢神経障害なし)。ABAシングルケースデザインを用い、A1期(15日間)・A2期(5日間)に理学療法を行い、B期(5日間)はVRリハを追加した。VR機器(mediVR カグラ)を用い、座位でリーチ課題を1回約10分間実施。測定は椅子座位で肩・股・膝関節90°屈曲、肘関節伸展位とし、30cm先の仮想目標への到達動作をHMD装着の有無で行った。リーチ方向は左右の前方・前側方の4方向とし、HMD装着下と非装着下との差を「リーチ誤差」と定義し主要評価項目とした。副次評価はBerg Balance Scale(BBS)、Short Physical Performance Battery(SPPB)、Timed Up & Go(TUG)、10m歩行速度とした。
【結果】
リーチ誤差はA1期で左前側方2.9㎝、左前方1.5㎝、右前方2.7㎝、右前側方6.1㎝であった。B期は0.1㎝、2.4㎝、2.9㎝、0.6㎝と前側方方向で著明に縮小した。A2期は6.5㎝、8㎝、5.3㎝、4.7㎝と再拡大した。一方、BBSは41→50→51点、SPPBは3→4→10点、TUGは15.5→13.9→11.1秒、10m歩行速度は0.6→0.7→0.9m/sと改善を維持した。
【考察】
VRリハにより前側方方向の誤差が著明に縮小した。これは体幹回旋等の複雑な動作に対して、ボディイメージの再構築や視覚依存の軽減が促されたためと考える。A2期で誤差は再拡大したが、高齢による学習保持の困難や介入中止の影響も否定できない。ただし副次評価は改善を維持しており、誤差修正がバランス・歩行機能に波及したことを示唆する結果となった。今後は症例数を増やし介入頻度や持続効果を含めた検証が望まれる。
【結論】
VRリハによるリーチ誤差は、視覚依存を排した姿勢制御を反映する新たな評価指標となり得る。
倫理的配慮:
対象者および家族に研究目的と内容を十分に説明し、文書による同意を得た。
糖尿病(DM)患者は姿勢制御において視覚依存が強く転倒リスクが高い。しかし従来のバランス評価は安全性や簡便性に課題がある。Virtual Reality(VR)は視覚情報を制限し姿勢制御を安全に評価できるがDM患者に限定した報告は少ない。本研究の目的は、VRリハビリテーション(VRリハ)により定量化される「リーチ誤差」の変化を明らかにし、その改善がバランス・歩行機能と関連するかを検証することである。
【方法】
対象は90歳代女性DM患者1名(DM性末梢神経障害なし)。ABAシングルケースデザインを用い、A1期(15日間)・A2期(5日間)に理学療法を行い、B期(5日間)はVRリハを追加した。VR機器(mediVR カグラ)を用い、座位でリーチ課題を1回約10分間実施。測定は椅子座位で肩・股・膝関節90°屈曲、肘関節伸展位とし、30cm先の仮想目標への到達動作をHMD装着の有無で行った。リーチ方向は左右の前方・前側方の4方向とし、HMD装着下と非装着下との差を「リーチ誤差」と定義し主要評価項目とした。副次評価はBerg Balance Scale(BBS)、Short Physical Performance Battery(SPPB)、Timed Up & Go(TUG)、10m歩行速度とした。
【結果】
リーチ誤差はA1期で左前側方2.9㎝、左前方1.5㎝、右前方2.7㎝、右前側方6.1㎝であった。B期は0.1㎝、2.4㎝、2.9㎝、0.6㎝と前側方方向で著明に縮小した。A2期は6.5㎝、8㎝、5.3㎝、4.7㎝と再拡大した。一方、BBSは41→50→51点、SPPBは3→4→10点、TUGは15.5→13.9→11.1秒、10m歩行速度は0.6→0.7→0.9m/sと改善を維持した。
【考察】
VRリハにより前側方方向の誤差が著明に縮小した。これは体幹回旋等の複雑な動作に対して、ボディイメージの再構築や視覚依存の軽減が促されたためと考える。A2期で誤差は再拡大したが、高齢による学習保持の困難や介入中止の影響も否定できない。ただし副次評価は改善を維持しており、誤差修正がバランス・歩行機能に波及したことを示唆する結果となった。今後は症例数を増やし介入頻度や持続効果を含めた検証が望まれる。
【結論】
VRリハによるリーチ誤差は、視覚依存を排した姿勢制御を反映する新たな評価指標となり得る。
倫理的配慮:
対象者および家族に研究目的と内容を十分に説明し、文書による同意を得た。
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