講演情報
[P-4-4]高齢糖尿病患者の認知機能に対する糖尿病罹患年数と膝伸展筋力体重比の影響
*野中 貴広1、河野 健一3、尾張 剛1、渡部 裕登1、西田 裕介2 (1. 国際医療福祉大学成田病院 リハビリテーション技術部、2. 国際医療福祉大学成田保健医療学部理学療法学科、3. 国際医療福祉大学福岡保健医療学部理学療法学科)
キーワード:
2型糖尿病、認知機能、フレイル
背景、目的
糖尿病は罹患期間が長いほど慢性高血糖、血管障害、インスリン抵抗性による炎症反応の持続を通じて認知機能が低下する。さらに、フレイルの中心的要素である筋力低下はインスリン抵抗性と関連するだけでなく認知機能低下を加速させる可能性が指摘され機序の理解が課題とされる。特にインスリン抵抗性は、脳内インスリンシグナル伝達障害を介して神経可塑性を損ない、さらにアミロイドβ代謝異常、慢性炎症、微小血管障害を引き起こすことにより、認知機能を低下することへ新たに着眼し、インスリン抵抗性と連関する血糖管理指標が認知機能と関連すると仮説し、その回帰モデルを明らかにすることを目的とした。
方法
当院に血糖コントロール目的に入院した60歳以上2型糖尿病(T2DM)患者29例を横断的に調査した。認知機能をMoCA、診療録から患者属性、糖尿病罹患年数、膝伸展筋力体重比を抽出した。統計解析としてANOVAでモデル全体の有意性を検証し、主解析はモデル1(従属変数:MoCA、説明変数:罹患年数)およびモデル2(モデル1の説明変数に膝伸展筋力体重比を加えたもの)にて回帰係数と有意性を検証した。
結果
T2DM29名を解析対象とし平均年齢は72.8歳、女性は69.0%だった。MoCAスコア平均は22.7点、インスリン抵抗性の指標であるCPR-IRは平均0.115、HbA1cは9.1%であった。重回帰分析の結果、モデル1(MoCA=糖尿病罹患年数)では有意な負の関連が認められ、調整済み決定係数は0.158であった。モデル2(MoCA=糖尿病罹患年数+膝伸展筋力体重比)では、膝筋力と糖尿病罹患年数の双方が有意であり、膝筋力の影響が強かった。調整済み決定係数は0.523に上昇し、モデル全体も有意であった。年齢、CPR-IRは有意な関連を示さなかった。
結論
本研究では、高齢T2DM患者の認知機能が糖尿病罹患年数および膝伸展筋力体重比と独立して関連し、膝筋力の影響がより強かった。長期罹患は血管障害・慢性炎症・インスリン抵抗性を介して神経変性を進める一方、筋力保持はインスリン抵抗性改善やミオカイン分泌を通じて代謝・脳血流・神経栄養因子を維持し認知機能を保護する可能性がある。したがって本研究は、罹患歴という不可逆的リスクに加え、可変的な身体機能指標として筋力評価が重要であることを示唆する。
倫理的配慮:
本研究は、国際医療福祉大学成田病院倫理審査委員会の承認(承認番号:25-CN-011)を受け実施した。
糖尿病は罹患期間が長いほど慢性高血糖、血管障害、インスリン抵抗性による炎症反応の持続を通じて認知機能が低下する。さらに、フレイルの中心的要素である筋力低下はインスリン抵抗性と関連するだけでなく認知機能低下を加速させる可能性が指摘され機序の理解が課題とされる。特にインスリン抵抗性は、脳内インスリンシグナル伝達障害を介して神経可塑性を損ない、さらにアミロイドβ代謝異常、慢性炎症、微小血管障害を引き起こすことにより、認知機能を低下することへ新たに着眼し、インスリン抵抗性と連関する血糖管理指標が認知機能と関連すると仮説し、その回帰モデルを明らかにすることを目的とした。
方法
当院に血糖コントロール目的に入院した60歳以上2型糖尿病(T2DM)患者29例を横断的に調査した。認知機能をMoCA、診療録から患者属性、糖尿病罹患年数、膝伸展筋力体重比を抽出した。統計解析としてANOVAでモデル全体の有意性を検証し、主解析はモデル1(従属変数:MoCA、説明変数:罹患年数)およびモデル2(モデル1の説明変数に膝伸展筋力体重比を加えたもの)にて回帰係数と有意性を検証した。
結果
T2DM29名を解析対象とし平均年齢は72.8歳、女性は69.0%だった。MoCAスコア平均は22.7点、インスリン抵抗性の指標であるCPR-IRは平均0.115、HbA1cは9.1%であった。重回帰分析の結果、モデル1(MoCA=糖尿病罹患年数)では有意な負の関連が認められ、調整済み決定係数は0.158であった。モデル2(MoCA=糖尿病罹患年数+膝伸展筋力体重比)では、膝筋力と糖尿病罹患年数の双方が有意であり、膝筋力の影響が強かった。調整済み決定係数は0.523に上昇し、モデル全体も有意であった。年齢、CPR-IRは有意な関連を示さなかった。
結論
本研究では、高齢T2DM患者の認知機能が糖尿病罹患年数および膝伸展筋力体重比と独立して関連し、膝筋力の影響がより強かった。長期罹患は血管障害・慢性炎症・インスリン抵抗性を介して神経変性を進める一方、筋力保持はインスリン抵抗性改善やミオカイン分泌を通じて代謝・脳血流・神経栄養因子を維持し認知機能を保護する可能性がある。したがって本研究は、罹患歴という不可逆的リスクに加え、可変的な身体機能指標として筋力評価が重要であることを示唆する。
倫理的配慮:
本研究は、国際医療福祉大学成田病院倫理審査委員会の承認(承認番号:25-CN-011)を受け実施した。
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン
