講演情報
[C-10-06]新潟県加茂市桐の蔵・加茂市民俗資料館における桐箪笥調査戦時下日本の実用家具のデザインと技術の特質解明・桐箪笥編(4)
*益岡 了1、新井 竜治2、谷本 尚子3 (1. 大阪工業大学、2. 九州大学総合研究博物館、3. 京都精華大学)
キーワード:
Paulownia Chest、Kamo City、Furniture Official Price List
日本の家具生産は戦後まで職人の手工に頼っていたが、1930年代の物資統制により和洋家具の規格化と公定価格制が導入された。欧州の戦時家具研究に対し、我が国では調査が限定的であったが、本報告は伝統的な桐箪笥産地として知られる新潟県加茂地域の有限会社桐の蔵所蔵の桐箪笥の実測を通じ、戦時下の「家具公定価格」基準と技術的特徴を明らかにするものである。 調査対象の箪笥には、極限の材料不足を補う職人の工夫が随所に見られた。側板や棚板には、良質な見付寸法を保ちつつ奥側を薄くする「なでごかし」や、不定形な端材(片耳付き材)を複雑に組み継ぐ技法が多用されていた。引き出しの板材も厚みが立体的に変化する変形材が使われており、これらは現代の機械加工では見られない、材料節約と堅牢性を両立させるための高度な手仕事の跡である。 1941年の木材統制法施行などにより、良質材の入手が極めて困難な中、当時の職人は多大な手間をかけて端材を活かし、実用性を維持した。数十年の使用に耐え、現代に修繕依頼が来るほどの品質を保っている事実は、物資欠乏という過酷な社会状況下における家具職人の知恵と技術の有用性を証明している。
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