講演情報

[KK1]今が旬・・臨床検査「次のステージ」へ「臨床検査技師の未来像と医療人としての役割」

*横地 常広1 (1. 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 代表理事会長)
我々、臨床検査技師を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。技術革新、デジタル技術の普及に伴い、新たな働き方が求められています。「医師の働き方改革」をトリガーとして進められている「タスク・シフト/シェア」の取組みも施行から3年が経過し、厚生労働省は今年度を評価年度と位置づけ、進捗調査並びに更なる啓発に向けた事業展開が検討されています。
看護協会が実施した調査結果では、医行為の一部限定解除によって進められている「特定看護業務」などの拡充により、一定の評価がされる中、保助看法に規定された「診療の補助行為」の一部限定解除により他の医療職種に業務拡大された行為などを含め、医師以外の医療関連職種にタスクシェアすることにより、看護師の本来業務の充実につながり、今後更なるタスクシェアの推進に取組むと報告されています。
今回の法改正により臨床検査技師に認められた10行為、現行法で実施可能とされた14行為について、タスクシェアが進めば医療機関における臨床検査技師の評価は一層高まることが期待できると思います。
 一方、2040年に向けた後期高齢者の増加により検査の需要は高まることが予想され、検査室では従来業務を抱えた上で、新たな業務への取組みは厳しいと言わざるを得ません。日本病院団体協議会の調査では、医業経費の大幅な上昇により、医業利益率、経常利益率ともに悪化傾向にあり、全国の多くの医療機関の経営状況は著しく切迫していると報告されています。したがって、新たな業務を展開するにあたり安易な人員増は望めない状況にあります。医療全体が大きく変わろうとしている今こそが、最大のチャンスと捉え、我々の根幹である「検査データの品質保証」を担保した上で、限られた人財を最大限活用し検査室の生産性向上に努め、「新たなニーズ」と「新たな評価」につなげることが必要であると考えています。
医療職種の働き方改革は、医師から看護師、看護師から臨床検査技師へタスクシェアされ、我々臨床検査技師のタスクシェア先は、スタッフの意識改革、業務の効率化、ICTを活用したシステム化、技術革新、生成AIなどを活用したデジタル技術だと考えています。施設の実情に合わせて、10年後の検査室のあり方に向かって、一歩踏み出していただきたいと思います。