講演情報

[GP11]当院におけるXpert MRSA/SA BCの抗菌薬適正使用への有用性評価

*野崎 成実1、岡本 満希1、神 千優1、原田 典明1 (1. 公益財団法人 ライフ・エクステンション研究所付属永寿総合病院)
【はじめに】血流感染症においてStaphylococcus aureusは病原性が高く、迅速な菌種同定と早期の抗菌薬適正使用が患者の予後向上に重要である。2024年1月より当院にて導入されたXpert MRSA/SA BC 「セフィエド」(ベックマンコールター、以下GX)を用いた事による適正な抗菌薬変更への有用性を評価した。【対象と方法】GX導入前の2023年1月~12月に検出された66例と導入後の2024年1月〜12月の血液培養陽性検体のうちGram染色でブドウ球菌が推定され、GXでの測定を行った9例を対象とした。同定検査との乖離、陽性報告後24時間以内の死亡、複数菌検出、コンタミネーションとして未治療の症例を除き、適正抗菌薬の使用率と開始時間、30日死亡率を評価した。評価にあたり、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下MRSA)とメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(以下MRCNS)検出の場合は抗MRSA薬、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(以下MSSA)検出の場合はCEZとABPC/SBTを適切な抗菌薬と設定した。【結果】血液培養陽性の初回報告から適切な抗菌薬変更指示までの平均時間はMRSAが12.0時間から1.9時間へ約10.1時間短縮、MSSAが33.1時間から2.3時間へ約30.9時間短縮、MRCNSが11.6時間から6.0時間へ約5.6時間短縮した。血液培養陽性の初回報告12時間以内の抗MRSA薬の使用率の変化は、MRSA が導入前44%(4/9)vs導入後100%(11/11)(p<0.05)、MRCNS が導入前65%(15/23)vs導入後91%(30/33)(p<0.05)へ増加した。MSSAに対する抗MRSA薬の不適切使用率は導入前31%(4/13)vs導入後0%(0/14)(p<0.05)へ減少した。30日以内死亡率の変化はMRSAが導入前20%(2/10)vs導入後8%(1/12)(p=0.43)、MSSAが導入前18%(3/17)vs導入後12%(2/17)(p=0.63)、MRCNSが導入前18%(7/39)vs導入後15%(7/47)(p=0.70)であった。【まとめ】GX導入により、推定菌が約2時間で報告可能となった。これにより、適切な抗菌薬の開始時間は有意に短縮しており、早期診断と不必要な抗菌薬使用の抑制の一助となった。今後もASTと協力し、抗菌薬適正使用に貢献していきたいと考える。   (連絡先 03-3833-8386)