講演情報

[GP12]強乳び検体における超遠心処理法を用いた(1→3)-β-D-グルカン測定の検討

*田口 薫子1、佐藤 和佳菜1、永井 悦子1、下坂 浩則1、長村 登紀子1 (1. 東京大学医科学研究所附属病院)
(1→3)-β-D-グルカン(β-D-グルカン)は深在性真菌症の診断補助において有用なバイオマーカーである。真菌感染症の診断・治療経過観察において頻繁に測定され、測定精度と迅速性の両立が求められているが、検体の性状により測定に干渉が生じることがある。特に強乳びによる測定エラーにしばしば遭遇し、結果報告には時間を要すうえ、測定不能となる場合もある。我々は、強乳び検体に対する対処法として超遠心処理法を検討したので、その結果を報告する。
【方法】使用機器:リムセイブ MT-7500(富士フイルム和光純薬株式会社)
検体:対象検体は2024年7月から2025年9月の14ヶ月間に当院で採取・保存されていた患者血清および血漿の残余検体を使用した。検討方法:β-D-グルカン陰性を確認した乳び〜強乳び検体450 μLにβ-D-グルカン陽性検体50 μLを添加し、既知濃度の試料を作製した。乳びによる影響のない対象として、乳びを認めない血漿についても同様に試料を作製し、各試料に対して以下の3条件で測定を実施した。① 添付文書記載の手順に準じた通常測定 ② 添付文書記載の対処法手順に準じ、前処理済み検体を3500 rpm・10分間遠心後、下層を採取して測定 ③ 乳び〜強乳び血漿検体を15000 rpm・10分間の超遠心処理したものを検体とし、手順書通り測定
【結果】①乳び検体9件中7件が測定不能となった。②9件中2件が測定不能となった。③9件全てで測定結果を得られ、測定不能は無かった。なお、超遠心処理によるβ-D-グルカンの濃度勾配は認めなかった。
【結語】①.②に比べ③の超遠心法では全ての検体について乳びによる影響なく良好な結果が得られた。乳び~強乳び検体に対する超遠心処理法は、測定前に検体の性状を術者が確認し処理を追加する事が可能であるため、再検査を省くことができ測定時間の短縮にも繋がると考えた。
本検討により、強乳び検体における超遠心処理法はβ-D-グルカンの測定結果に影響を与えず迅速に測定できる可能性が示された。
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