講演情報

[GP13]当院におけるFilmArray®髄膜炎・脳炎パネルの運用実績と有用性の評価

*嶋田 彩里1、三枝 太郎1、江口 香織1、星野 隆正1、神野 雅史1、窓岩 清治1 (1. 東京都済生会中央病院 臨床検査科)
【目的】髄膜炎・脳炎は中枢神経系に炎症をきたした病態であり、治療の遅れが重篤な後遺症や致死的転帰を招くため、早期診断が重要である。当院では2023年6月よりFilmArray®髄膜炎・脳炎パネル(MEパネル)を導入し運用を開始した。今回、MEパネルの運用実績と結果報告後の治療薬の選択について調査したので報告する。
【方法】2023年6月~2025年9月にMEパネルの依頼のあった111例(重複例を除く)を対象とし、同時に髄液細胞数、細菌培養検査との結果を比較した。また、陽性例に対してMEパネル実施前後での治療薬について後方視的に調査した。
【結果】陽性は27例、陰性は84例であった。検出された病原微生物のうち、ウイルスが23例(Enterovirus:2例、Herpes simplex virus(HSV)-1:2例、HSV-2:6例、Human herpesvirus 6:1例、Varicella zoster virus:12例)であった。細菌・酵母様真菌は4例(Listeria monocytogenes:1例、肺炎球菌:2例、Cryptococcus neoformans/gattii:1例)であった。うち3例は培養検査でも同一菌の発育を認めたが、肺炎球菌が陽性となった1例は発育を認めなかった。また、髄液細胞数が5個/μL以下であったのは3例であった。初期治療で抗菌薬と抗ウイルス薬の併用は8例であり、MEパネルの結果により8例全てで治療薬が変更された。一方でMEパネル陰性であった4例で培養検査において細菌の発育を認めた。その内訳はL.monocytogenes:1例、G群溶血性連鎖球菌:1例、Streptococcus suis:1例、緑膿菌:1例であった。
【考察】MEパネル導入により院内で検出不能であったウイルスを早期に検出し、報告できるようになったことからウイルス性髄膜炎・脳炎の早期診断に有用であった。細菌性髄膜炎においても早期診断が可能でMEパネルの有用性が示唆された。一方、MEパネルで検出できない感染症例もあり、グラム染色や培養検査も並行して行う必要があった。MEパネルと培養検査の乖離例においては、慎重な結果解釈の必要があると考える。
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