講演情報
[GP26]初尿と中間尿の検査所見の差異
*楢館 秀斗1、小島 結衣1、小林 瑠佳1、嘉手川 重之介1、田原 心結1、熊川 由莉1、西澤 美穂子1、川上 保子1 (1. 新渡戸文化短期大学 臨床検査学科)
【緒言】尿は非侵襲的に採取可能な優れた検査材料であり、尿から得られる生体情報は多く有用である。尿検査にあたっては「中間尿」採取が原則であるが、採尿は患者に委ねられている。検査技師は採尿法の違いによる尿検査所見の差異について正しく理解することは重要である。我々は、初尿と中間尿の違いが検査所見にどの様な影響を与えるかを検証することを目的とし、若干の知見を得たので報告する。【対象】新渡戸文化短期大学 臨床検査学科 臨床生化学ゼミ所属の学生14名(男子4名、女子11名)から採取した随時尿を用いた。【方法】1. 尿定性検査:ウロペーパーⅢ10(栄研化学(株))を用いて10項目を測定した。2. 尿沈渣検査法:JCCLS尿沈渣検査法に従い尿沈渣を得た。3. 蛋白定量および質的解析法:定量にはマイクロTPテストワコー(富士フィルム和光純薬(株))を用い、10%濃度のゲルを用いてSDS-PAGE法により質的変化を解析した。【結果】1. 定性検査における所見の差異:10項目のうち、白血球は13例中5例の初尿で陽性であり3例は中間尿で陰性化した。また、蛋白質は1例が初尿中間尿共に陽性であった。2. 尿沈渣所見の比較:尿沈渣量は初尿で6.0±4.0 mm、中間尿で5.9±3.4 mmと大きな差は見られなかったが、沈渣成分については初尿は中間尿に比べて白血球、扁平上皮細胞、細菌、粘液糸を多く認めた。3. 定性検査で尿蛋白陽性例が見られたため、定量法と電気泳動法を行った。蛋白濃度は初尿で16.0±9.9 mg/dL、中間尿で17.2±9.9 mg/dLであり、試験紙法で陰性であっても30 mg/dL以上が初尿で2例、中間尿で3例見られ、アルブミン以外の蛋白質の存在が示唆された。さらに電気泳動による質的検索により90~100 kDaに幅広いバンドを認め、初尿の方が太い事が確認された。それ以外の蛋白に差異は見られなかった。【まとめ】初尿と中間尿を用いた尿検査所見の比較により、その差異は特に尿沈渣成分で顕著であった。また、尿蛋白においては試験紙で陰性であっても定量値が30mg/dLを超える例もあり、これは90~100 kDaの蛋白の存在によるものと予測された。検査のための採尿は、患者に委ねられていることから、患者に正しい採尿方法を説明し、正しく実行してもらう事が大変重要であるが、検査技師は採尿の違いによる尿中成分の差異について理解することも重要であると考えられた。
