講演情報

[GP28]尿中蛋白の電気泳動的検索 ~早朝尿と随時尿を用いて~

*佐々木 日花里1、土屋 早叶1、相澤 陸1、岡本 早那子1、長谷部 瑚春1、熊川 由莉1、西澤 美穂子1、川上 保子1 (1. 新渡戸文化短期大学 臨床検査学科)
【緒言】尿は非侵襲的に採取可能であり、病態推測としてスクリーニング検査は大変有用である。尿検査材料には部分尿として随時尿や早朝尿があり、一般的には随時尿が用いられる。今回、定性検査及び尿沈渣検査および尿蛋白定量について両者を比較したところ、いくつかの検査項目に差異を見出した。その中で尿蛋白に着目し、量的変化として尿蛋白定量法、質的変化としてSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE) 法を行い、早朝尿と随時尿の尿中蛋白の比較を行うことを目的とした。【対象】新渡戸文化短期大学 臨床検査学科 臨床生化学ゼミ所属の学生14名(男子4名、女子11名)から採取した早朝尿と随時尿を用いた。【方法】1. 蛋白定量法:マイクロTPテストワコー(富士フィルム和光純薬(株))を用いた。2. 尿中蛋白の分離解析法:蛋白濃度を統一し、10%濃度のゲルを用いてSDS-PAGE法を実施し銀染色を施した。【結果】1. 早朝尿と随時尿の蛋白濃度の量的比較:早朝尿と随時尿において初尿と中間尿を比較したところ、早朝尿の初尿で9.1±6.4 mg/dL、中間尿で6.6±5.0 mg/dL、随時尿の初尿で16.0±9.9 mg/dL、中間尿で17.2±9.9 mg/dLであり何れも随時尿で高値であった。中間尿においては早朝尿6.6±5.0 mg/dLに比し、随時尿17.2±9.9 mg/dLと随時尿で有意に高値であった。2. 早朝尿と随時尿の尿中蛋白の質的比較:蛋白定量値が15 mg/dL以上の6例について早朝尿、随時尿の初尿と中間尿についてSDS-PAGE法で尿中蛋白の比較を行ったところ、早朝尿と随時尿で検出された蛋白バンドが異なる例が4例見られた。特に120 kDa以上の高分子領域に検出されるバンドの濃染が4例、66 kDaの蛋白バンドの濃染が2例見られた。また、90~100 kDaの幅広いバンドについては随時尿よりも早朝尿で太く確認された。60 kDaより低分子領域には変化は確認できなかった。【まとめ】過去に早朝尿と随時尿の電気泳動的検索についての報告は確認できず、本研究にて早朝尿と随時尿を用いたSDS-PAGE法による尿中蛋白の比較により、定性検査、尿沈渣検査所見以外に早朝尿と随時尿中の蛋白に差異が認められたことは新たな知見と考える。今後は、変化の見られた蛋白の同定を進めて行きたい。