講演情報

[GP29]毛細管電気泳動法の日本人蛋白分画基準値/基準範囲の設定新たな病態検査上の意義の探究に向けて

*田代 華澄1、原田 典明1、小山 恭正1、伊藤 喜久1 (1. 公益財団法人 ライフ・エクステンション研究所付属永寿総合病院)
毛細間電気泳動法(Capillary electrophoresis : CEP)は血清蛋白の分離・分析に広く用いられている。しかし、企業から提供された欧州人による基準値が用いられている現状にあり、日本人独自の基準範囲の設定が求められている。よって、日本人健常者の血清蛋白分画の基準値・基準範囲を設定し、ALB分画の評価を行う。
2023年から2025年8月までの期間でライフ・エクステンション研究所永寿総合・健診センターにおいて、トータル488件の健康情報を得て、健診後の血清を二次利用した。血算、免疫生化学、尿、糞便検査、心電図、胸部X線検査の結果と別途測定したTP、ALB、CRPを総合的に評価し、基準個体を選択した。蛋白分画値は従前どおり、分画比率(%)とTPに分画比率を乗じて求めた絶対量の両方で表わした。20-60歳までの年齢層で、性別・年齢別に基準値・範囲を設定した。
今使用している基準範囲と比較すると、日本人よりALB分画は低値、α1、α2分画は高値を示した。また、蛋白分画値は分画比率と絶対量で高い再現性を証明した。
電気泳動システムはALB分画を基準にしてここから分画比率を求めている。日本の衛生水準が高く、炎症マーカーが低値であることから、わずかな病態背景の違いが日欧の差異として健常者においても反映される。従って、本報告を基礎に毛細管電気泳動法の蛋白分画比率、TPから算定された絶対量をレファランス値として用いることを提唱する。
本研究では日本人独自の基準範囲を設定することで、今後の病態解析がより正確なものとなることを目的としており、日本人は従来の基準範囲よりALB分画が高く、α1、α2分画の相対的比率が低いという結果が得られた。これにより、α2分画での比率の低下は肝機能低下、あるいは血管内溶血が示唆されるがこれまでの基準では偽陽性の頻度が高まる。逆に炎症による上昇では偽陰性の改善につながり、正確な病態解析に貢献できる。