講演情報

[GP34]職種の垣根を超える!内視鏡細胞診検体の迅速処理について

*今村 倫敦1 (1. 社会医療法人社団 東京巨樹の会 東京品川病院)
背景:内視鏡介助業務は臨床検査技師、看護師、臨床工学技士など多職種が担っており、各職種で優先事項が異なることが多い。臨床検査技師は検体処理、看護師は患者ケア、臨床工学技士は機器管理を重視する傾向が強い。しかし細胞診検体に関しては、乾燥による核や細胞質の形態変化や染色性低下による診断への影響から「迅速処理」が不可欠である。目的:内視鏡介助に関わる全職種が「細胞診検体は迅速処理を最優先すべき」という認識を共有し、従来の優先事項を超えて行動できるよう教育することで、診断精度と介助の質向上を図る。方法:臨床検査技師が中心となり、細胞診検体の脆弱性や処理遅延の影響を具体例とともに解説した。生検検体との違いを比較し、遅延による診断影響を提示、検体処理のデモンストレーションを組み合わせ、実践学習を促した。
結果:教育により、「細胞診検体は最優先で処理すべき」という視点を共有できた。検体処理に向けた行動が優先され、処理時間は短縮した。説明会後に、乾燥による形態変化や染色性の低下は報告されていない。考察:本教育により、臨床検査技師視点の「迅速処理」という優先事項が全職種に共有されたことは大きな成果であるが、他職種の視点も重要である。看護師視点では鎮静下の患者の安全確保や苦痛緩和が最優先であり、検体処理に専念するあまり患者観察が疎かになってはならない。臨床工学技士視点では、高度な機器を安定稼働させることが検査の安全と精度を支える基盤である。これらの優先事項と「細胞診の迅速処理」とは競合するものではなく、むしろ相互に補完し合うべき要素である。教育を通じて、各職種の専門性を尊重しつつ共通課題を共有することで、チーム全体の柔軟性と連帯感が高まった。まとめ:内視鏡介助は多職種が関与するが、細胞診検体では「乾燥を防ぐ迅速処理」が全職種共通の最優先課題である。本取り組みは臨床検査技師の視点を基盤に教育を行いながら、看護師や臨床工学技士の役割を尊重し、相互補完的な連携を促したと言える。職種の垣根を越えて協働することで、診断精度の向上と安全で効率的な内視鏡介助が実現できた。今後は定期的な研修を通じ、各職種の優先事項と共通課題をバランスよく再確認し、多職種連携のさらなる発展を目指したい。<連絡先:03-3764-0511>