講演情報
[GP35]血管怒張手技の検証
*田村 唯稀1、迫西 大輔2、宿利 淳2、秋山 楓太2、長尾 明日望2、栗原 由利子1 (1. 東京工科大学大学院 医療技術研究科 臨床検査学専攻 2.東京工科大学 医療保健学部 臨床検査学科)
【はじめに】
臨床現場での採血時、穿刺困難な対象者には血管怒張手技が用いられるが、その選択は施設や個人の経験に委ねられ標準化されていないのが現状である。個々の手技の有効性に関する研究報告はあるものの、異なる手技を同一被験者で客観的指標を用いて直接比較した研究は少ない。我々の先行研究では、細い血管に対する「加温」の有効性を示したが、被験者数が20名と少数で、手技の臨床的実用性にも課題が残った。そこで本研究では、より臨床現場の実態に即した手技条件を再設定し、対象被検者数を拡大して血管怒張手技の効果を比較検討することを目的とした。
【方法】
学生48名(男性15名、女性33名)を対象に、正中皮静脈において血管の断面積を超音波診断装置で計測した。「駆血のみ」の状態と、駆血に加えて「叩く」「さする」「クレンチング」「腕をおろす」「加温」の5つの手技をそれぞれ追加した条件で、通常時の面積との変化割合を比較検討した。
【結果】
全被験者(n=48)の解析において、「駆血+さする」の手技が他の4つの追加手技と比較して、統計学的に有意な血管拡張効果を示した。しかし、Cohen’s dを用いて算出した効果量はごく少量であり、臨床的に有効な効果があるとまでは断定できない結果であった。
【考察】
「駆血+さする」という操作で認められた統計的有意差は、物理的要因と生理的要因が起因すると考えられる。物理的要因として、さすることによる一時的な血液貯留があり、生理的要因として、軸索反射を介してカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)などの血管拡張物質の放出を促進した可能性が考えられる。加えて、マッサージ効果による局所血流の増加が一酸化窒素の産生を増強させた可能性も推察される。一方で、臨床的に有効な効果が得られなかったのは、対象が若年健常者であったためと考えられる。若年健常者は元来、血管がしなやかで拡張しやすいため、駆血のみで十分な血管拡張状態に達し、追加手技による効果が頭打ちになる「天井効果」が生じた可能性がある。
【結語】
若年健常者においては、静脈怒張手技間に統計的な有意差は認められるものの、その効果量を考慮すると、特定の追加手技が持つ臨床的な有効性は限定的であることが示唆された。
臨床現場での採血時、穿刺困難な対象者には血管怒張手技が用いられるが、その選択は施設や個人の経験に委ねられ標準化されていないのが現状である。個々の手技の有効性に関する研究報告はあるものの、異なる手技を同一被験者で客観的指標を用いて直接比較した研究は少ない。我々の先行研究では、細い血管に対する「加温」の有効性を示したが、被験者数が20名と少数で、手技の臨床的実用性にも課題が残った。そこで本研究では、より臨床現場の実態に即した手技条件を再設定し、対象被検者数を拡大して血管怒張手技の効果を比較検討することを目的とした。
【方法】
学生48名(男性15名、女性33名)を対象に、正中皮静脈において血管の断面積を超音波診断装置で計測した。「駆血のみ」の状態と、駆血に加えて「叩く」「さする」「クレンチング」「腕をおろす」「加温」の5つの手技をそれぞれ追加した条件で、通常時の面積との変化割合を比較検討した。
【結果】
全被験者(n=48)の解析において、「駆血+さする」の手技が他の4つの追加手技と比較して、統計学的に有意な血管拡張効果を示した。しかし、Cohen’s dを用いて算出した効果量はごく少量であり、臨床的に有効な効果があるとまでは断定できない結果であった。
【考察】
「駆血+さする」という操作で認められた統計的有意差は、物理的要因と生理的要因が起因すると考えられる。物理的要因として、さすることによる一時的な血液貯留があり、生理的要因として、軸索反射を介してカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)などの血管拡張物質の放出を促進した可能性が考えられる。加えて、マッサージ効果による局所血流の増加が一酸化窒素の産生を増強させた可能性も推察される。一方で、臨床的に有効な効果が得られなかったのは、対象が若年健常者であったためと考えられる。若年健常者は元来、血管がしなやかで拡張しやすいため、駆血のみで十分な血管拡張状態に達し、追加手技による効果が頭打ちになる「天井効果」が生じた可能性がある。
【結語】
若年健常者においては、静脈怒張手技間に統計的な有意差は認められるものの、その効果量を考慮すると、特定の追加手技が持つ臨床的な有効性は限定的であることが示唆された。
