講演情報

[GP37]胸水の特徴的な細胞像から乳頭状腎細胞癌が疑われた1例

*三上 壱生1、山田 正人1、河村 淳平1、川村 樹璃1、角田 敏一1、小林 臣1、山田 果歩1、森田 茂樹1 (1. 社会福祉法人 三井記念病院)
【はじめに】腎実質に発生する腎細胞癌は組織学的分類が多い.乳頭状腎細胞癌は淡明細胞型腎細胞癌に次ぐ頻度で発生し,細胞の異型度からtype1とtype2に分類され,線維血管性間質を有する乳頭状や管状乳頭状構築を主体とする.今回,胸水中に出現した腫瘍細胞の特徴から乳頭状腎細胞癌が疑われた症例を経験したので報告する.
【症例】70代,男性.IgA腎症を原疾患に腎クリニックで週3回の維持透析を行っていた.冠動脈狭窄を指摘されており,透析後に心房細動を繰り返すようになり,当院に救急搬送された.入院後のCTで左腎中央から下極にかけて不整形な腫瘤を指摘された.右腎は摘出後の状態であり(詳細不明),胆石がみられる以外に実質臓器に大きな変化はなく,腹水は目立たなかった.また,両側胸水の貯留と両肺野に多数の小結節と無気肺がみられ,両側胸膜の肥厚や局所の隆起があり肺転移・癌性胸膜炎・胸膜播種に矛盾しない所見であった.
【胸水穿刺液検査】外見:赤色,混濁 ADA: 16.8U/L,CEA: 1.8ng/mL,CA19-9: 2.7U/mL
【胸水細胞所見】異型細胞は孤在性〜集塊状に出現し,集塊は小〜大型で球状や分葉状,樹枝状の配列を示し,中心部には間質成分を認めた.腫瘍細胞は間質成分の周囲に重層化し,小型で核濃染,核形不整,核溝を認める異型の弱い細胞と,大型でクロマチン微細顆粒状,核溝や核小体を有する異型の強い細胞が混在した.細胞質は泡沫状や空胞がみられた.
【胸水セルブロック】HE所見:中心部にエオジン好染性の間質とその周囲に大型の異型細胞が配列する集塊を散見した.免疫染色ではPAX8+,CD10+/−,CK7−,CK20−,AE1/AE3+,AMACR+,CD117−,HMB45−であった.腎細胞癌由来として矛盾しない所見であった.
【まとめ】胸水の細胞所見とセルブロックの免疫細胞学的所見から乳頭状腎細胞癌が疑われた症例を報告した.腫瘍細胞は間質成分周囲に配列する特徴を示し,異型度の異なる細胞は乳頭状腎細胞癌type1とtype2に相当すると考えられた.全身状態悪化により永眠され,剖検は行われていない.
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